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シスプラチンの低用量維持投与、抗腫瘍効果の増強を膀胱がんマウスで確認-北大ほか

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2023年12月07日 AM09:00

尿路上皮がんでも使用されるシスプラチン、低用量維持投与は未検証

北海道大学は12月4日、抗がん剤であるシスプラチンの低用量維持投与が、標準治療である最大耐用量による投与と比較して腫瘍組織の炎症性変化を抑制し、抗腫瘍効果を増強する可能性を示したと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究院の樋田京子教授、間石奈湖助教、医学研究院の篠原信雄教授、菊地央客員研究員、藤田医科大学医学部の樋田泰浩教授(元 北海道大学病院准教授)らの研究グループによるもの。研究成果は、「British Journal of Cancer」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

転移を伴う進行性尿路上皮がんは最も予後不良ながんの一つである。治療には抗がん剤、免疫チェックポイント阻害剤などが使われるが、長期の奏効が得られるケースはまれで、患者予後の十分な改善には至っていない。

従来の抗がん剤治療は最大耐用量(maximum tolerated dose;MTD)による投与を基本としているが、休薬期間中の再増大や薬剤による嘔吐、脱毛などの有害事象が問題となる。一方、休薬期間を設けず低用量の抗がん剤を長期間にわたり持続的に投与する低用量維持投与(low-dose metronomic;LDM)による抗がん剤治療法が、がんの増大に必要な血管新生を抑制し、がん細胞の増殖を阻止できる治療法として、近年提唱されている。タキサン系の薬剤などをLDM投与で用いることによる治療効果が検証され、一部臨床応用もされている。一方で、尿路上皮がんを含むさまざまながん腫の抗がん剤として使用されているシスプラチンのLDM投与を検証した報告はほとんどない。

LDM投与のシスプラチンによる効果を膀胱がんマウスで検証

研究グループは、これまで尿路上皮がんにおいて抗がん剤投与により、腫瘍組織内で炎症性変化が生じ、それが腫瘍血管の異常性をもたらし治療抵抗性を引き起こしていることを見出している。そこで、抗がん剤の低用量維持投与が抗がん剤治療による腫瘍組織の炎症性変化を抑制し、良好な治療効果が得られるのではないかと考えた。そして、マウス膀胱がんモデルを用いて、LDM投与のシスプラチンによる抗腫瘍効果を検証し、腫瘍微小環境に与える影響を解析した。

膀胱がん担がんマウスに、+シスプラチンのMTD投与とそれぞれの薬剤または両方の薬剤のLDM投与による治療実験を行い、抗腫瘍効果および腫瘍組織内の炎症性変化や腫瘍血管の状態を比較検討した。

LDMシスプラチン+MTDゲムシタビン、腫瘍微小環境を正常化し抗腫瘍効果を高める

コントロール群と比較してLDMのシスプラチン+MTDのゲムシタビン投与群が腫瘍増殖、骨転移を抑制した。またLDMのシスプラチン+MTDのゲムシタビン投与群の腫瘍組織ではMTDのシスプラチン投与群と比較してIL-8、PTX3など、炎症関連分子の発現が抑制された。さらに、免疫組織学的解析により腫瘍血管が正常化され、腫瘍組織内の骨髄由来免疫抑制細胞の動員、腫瘍間質の線維化も抑制され、腫瘍微小環境が正常化されることが示唆された。これらの結果より、シスプラチンの一回投与量を減らし投与頻度を上げるLDM投与法が腫瘍間質の炎症性変化の抑制と抗腫瘍効果増強につながることが示された。

臨床試験での検証が必要だが、進行性尿路上皮がん予後改善に寄与し得る可能性

今回、シスプラチンの低用量維持投与が炎症性変化の抑制、腫瘍血管の正常化とともに抗腫瘍効果を増強することが明らかになった。これらのことより、シスプラチンを低用量維持投与で用いることで、より大きな治療効果を得られる可能性が示された。さらに、低用量であるため副作用が軽減されることも期待される。「今回の結果はマウスモデルにおけるものであり、新しい治療法として実用化されるためには、今後、シスプラチンの低用量維持投与の有用性が臨床試験により検証されることが必要であるが、進行性尿路上皮がん患者の予後改善に寄与する治療法の一つとして期待される」と、研究グループは述べている。

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