第2頚椎歯突起骨折、国内で年間約500例
群馬大学は12月1日、全国入院患者データベースであるDPCデータを使用し、高齢者の首の骨折(第2頚椎歯突起骨折)で治療が必要だった患者を対象とし、治療方法とその死亡リスクについて調査した結果、治療方法(ハローベスト固定、前方固定、後方固定)の違いでは死亡リスクに差はなく、男性であること、他の病歴を有していることが死亡リスクに大きく影響することがわかったと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科整形外科学教室と東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学教室を中心とする研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。
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第2頚椎歯突起骨折は、首を強く曲げたり伸ばしたりを強制された時に起こる骨折で、首のけが全体のおよそ10%を占めており、日本では1年間におよそ500例発生している。高齢になると転倒しやすくなるため、頻度が増えてきている。この骨折は、手術をしなければ骨がくっつく割合が6割程度といわれており、手術での治療が望ましいとされている。しかし、手術した場合としなかった場合での、入院中に死亡するリスクに関しては専門家でも意見がさまざまであり、治療法によりそのリスクに差があるのかは明らかではなかった。
ハローベスト固定の治療は死亡リスクに影響するのか
研究グループはこれまでに、同じDPCデータベースを用いて第2頚椎歯突起骨折に対して実際にどのような治療が行われており、入院中に死亡する割合や入院中の合併症がどうであったのかを明らかにしている。その研究では、第2頚椎歯突起骨折で入院した患者のおよそ8割が手術ではない治療(保存的治療)を受けており、そのうちハローベスト固定で治療されていたのは3割程度だった。ハローベスト固定は、これまで高齢患者にとって合併症が多いと思われていた。この保存的治療を受けた患者の中には、治療の必要なかった患者や、治療に耐えられないためやむを得ず治療されなかった患者も含まれていた。そこで、治療が必要だった患者を対象に、治療の種類で入院中の死亡リスクに差があるのかどうかを明らかとするため、研究を行った。
「男性」「他の病歴あり」が死亡リスクを高める要因と判明
今回研究グループは、第2頚椎歯突起骨折を起こし、ハローベスト固定、または手術で治療が必要であった患者900人を対象とし、入院中に死亡するリスクがどんな要因で高くなるのかについて検討した。その結果、治療の種類はリスクに影響しないこと、また、「男性である」ことや「これまでの病歴が多いこと」(チャールソン併存疾患指数でカテゴリー3以上)がリスクを高くすることがわかった。
今回の結果は、第2頚椎歯突起骨折の治療方針を決定するための手助けとなり、より安全で適切な治療を行うための基盤となると考えられる。しかし、けがの後、患者がどのような生活を送っているのか、治療に満足できているのかは明らかになっていない。「今後は日常生活のレベル(歩けているのか、車いすか、寝たきりか)や要介護状態のレベル(生活のため人の手助けがどの程度必要か)に注目し、治療法によってそれらの活動性に影響があるのかを明らかにし、患者にとってよりよい治療につながることに貢献したい」と、研究グループは述べている。
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