利便性の高いオンライン診療、心臓不整脈疾患では心電図波形の確認不可が課題
神戸大学は11月30日、心臓不整脈を有する患者に対する小型のパッチ型心電計郵送による長時間心電図検査と、リアルタイムで送信される心電図をモニタリングしながら行う新たなオンライン診療体制の安全性と有用性を確認したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科内科学講座循環器内科学分野の髙見充特命講師、福沢公二特命教授、平田健一教授、株式会社オプティム、株式会社ZAIKENの研究グループによるもの。研究成果は、「Circulation Reports」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
オンライン診療は利便性が高いが、診療中に得られる患者の身体情報、検査所見が限られている。特に、心臓不整脈疾患を有する患者において診察時に心電図波形を確認できないことはオンライン診療の大きな欠点だ。
患者が小型パッチ型心電計を装着、リアルタイム心電図を確認するオンライン診療を検証
心臓不整脈に対するカテーテル心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)を受けた患者は不整脈の再発の有無の確認のために定期的な外来通院、心電図検査が必要だ。今回の研究では、従来の対面診療の外来通院と異なる、小型のパッチ型心電計(duranta:株式会社ZAIKEN)を患者の自宅へ郵送し、装着した心電計から送られてくるリアルタイム心電図を確認しながら行うオンライン診療(オンライン診療ポケットドクター:株式会社オプティム)の安全性と有用性を検証した。
オンライン診療ポケットドクターは、医療を必要としている人々と遠隔地にいる医療の専門家をつなぐサービス。オプティムとMRT株式会社との共同サービスであり、オンライン診療における診療予約から決済までの一連の流れをスマートフォン・タブレット上で実現できる。
カテーテルアブレーション治療後、半年間の有害事象発症なし/患者満足度「高」
今回の研究では、カテーテルアブレーション治療を受けた合計38人の患者を、小型心電計郵送・リアルタイム心電図モニタリングを組み合わせたオンライン診療でフォローアップを実施した。なお、今回の研究では、病状が安定している患者を対象とした。致死的不整脈を有する患者や重症心不全の患者などは登録されていない。
カテーテルアブレーション治療後、半年間のフォローアップにおいて従来の対面診療と比較すると、今回の新しいオンライン診療群は来院必要回数が有意に少ない一方、心電図モニタリング時間は約4倍長い結果だった。また、この新しいオンライン診療において半年間で有害事象の発症は認めず、患者満足度は非常に高いことが示された。
通院困難・負担が大きい場合など、オンライン診療が有用な可能性
この研究結果により、心電図波形を確認しながら行うオンライン診療が安全に施行可能であり、その有用性や患者満足度が高いことが示された。外来診療においては、対面診療が基本だ。しかし、病状が安定している心臓不整脈疾患の患者において、仕事や学業、感染症のため来院が難しい場合や、遠方で通院負担が大きい場合などには、この新しいオンライン診療が有用である可能性が示唆された。また、今後、在宅医療や不整脈スクリーニングなどさまざまな場面でも活用できる可能性がある、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・神戸大学 プレスリリース