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排尿障害、尿道内排尿流の方向・速度の可視化に成功-東北大ほか

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2023年12月01日 AM09:30

QOL低下につながる排尿症状、尿道内腔状態の影響を評価する手段はなかった

東北大学は11月28日、ハイフレーム超音波撮像技術を用いて、排尿中の尿道内の流路変形と内部の流れベクトル分布を1秒当たり1,000枚以上の高時間分解能で計測するイメージングシステムを開発し、前立腺肥大症などにより変性した尿道内部における詳細な流れの可視化を初めて実現したと発表した。この研究は、同大学際科学フロンティア研究所の石井琢郎助教、獨協医科大学病院排泄機能センターの山西友典教授(当時)、カナダ・ウォータールー大学のAlfred Yu教授、東北大学大学院医工学研究科の西條芳文教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Medical Physics」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

前立腺肥大など加齢に伴う尿道の変性は排尿症状の主要因の一つであり、排尿症状の慢性化は患者のQOL低下につながるため、効果的な診断治療技術が必要とされている。治療手段が多様化する一方で、客観的な下部尿路の評価は、膀胱内圧の計測などによる間接的な方法に限られており、尿道内腔状態が尿の排出にどのような影響を与えているのか、詳細に評価する手段はこれまで存在しなかった。研究グループは、尿道内における排尿流を詳細に可視化する技術を開発し、排尿症状を有する尿道内においてどのような流れが生じているのか明らかにすることを目的とした。

複雑な流れパターンを正確に捉える経直腸超音波イメージングシステムを開発

血管と異なり、尿道は排尿中にのみ展開し流路を形成する。また、流体シミュレーションによる先行研究により、前立腺肥大症などにより狭小化した尿道内ではジェット流や渦流など複雑な流れパターンの発生が予測されていた。こうした排尿中の尿道内流れを詳細に観察するためには、1)臓器の大きな変形に伴う流れの変化をとらえるための時間分解能を有し、2)複雑な流れパターンを可視化するための、流れの方向と速さの分布の定量的計測が可能なイメージングシステムを実現する必要がある。

今回、研究グループが以前開発したContrast-enhanced Urodynamic VectorProjectile Imaging(CE-UroVPI)という超音波イメージング法を用い、経直腸超音波イメージングシステムを新たに開発した。このシステムは、ハイフレームレート超音波撮像法という技術に基づき、B-mode動画と流れベクトル動画を1,250画像/秒という高いフレームレートで同時に取得することができる。これらの画像を合成し可視化する事で、排尿中の尿道において、いつ、どこで、どのような流れが生じているか、尿道の臓器運動と尿の流れの時間・空間変動を明らかにする事を目指した。

症状有する男性で排尿開始/終了ダイナミクスの可視化に成功、終了時の逆流を確認

研究グループは、このシステムを用いて排尿症状を有する男性被験者に対する排尿流イメージングを実施し、排尿中のさまざまなフェーズにおける前立腺部尿道の臓器運動と内部流れの変動を観測した。その結果、排尿開始期と排尿終了期において、約1秒間の間に流路の拡張・収縮、流路角度の変化、流れの発達や停止などのダイナミクスが可視化された。特に、排尿終了期では、外尿道括約筋の運動によって、尿道の収縮が出口側から膀胱測に伝搬し、この運動によって尿が膀胱側に飲み込まれるように逆流している事が明らかになった。この収縮伝搬は約100ミリ秒という短時間の現象であり、開発したシステムが有する高ハイフレームレート撮像によって詳細な運動の解析が初めて可能となった。

狭窄を有する場合、尿道内に渦流やジェット流が生じることも判明

さらに、排尿症状を有する被験者の中でも特に尿道内に狭窄を有する場合は、尿道内に渦流やジェット流が生じている事が明らかになった。流体シミュレーションによる先行研究においても、このような渦流の発生は、尿道内部における流体エネルギーの損失に寄与し、体外へのスムーズな排尿を阻害する要因として示唆されている。今回の研究においても、尿道内の一部が展開しにくい「静的な狭窄」や、一度展開した尿道が部分的に閉塞してしまう「動的な狭窄」など臓器の形状や運動の異常が尿道内部の流れを乱し、効率的な液体輸送に影響を与えている事が、排出中の流れの詳細な観察により示唆された。

新しいイメージング技術、患者個別の薬剤選択や低侵襲な外科治療につながる可能性

この研究で開発した新しいイメージング技術は、尿道のさまざまな形態や運動性状と尿道内排尿流の相互作用を詳細に観察し、患者固有の排尿症状メカニズムの解明を可能にすると期待される。「この技術によって得られるデータを応用し、尿道内流れの解析に基づいて排尿症状の要因となっている尿道の部位や因子を予測することで、患者個別に最適な薬剤選択、より低侵襲な外科治療などに向けての、重要な医療支援技術としての展開を目指す」と、研究グループは述べている。

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