関心のある性や自分の性別などに関して調査
国立成育医療研究センターは11月24日、大学生のジェンダーアイデンティティー(自分のジェンダーをどのように認識しているか:GI)と性的指向について調査し、多様性が見られることがわかったと発表した。この研究は、同センター分子内分泌研究部の深見真紀氏、吉田朋子氏らと、ダイバーシテイ研究室の松原圭子氏、周産期病態研究部の中林一彦氏、國學院大學の島田由紀子氏、明治大学の佐々木掌子氏らの研究グループによるもの。研究成果は「Sexual Medicine」に掲載されている。
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はじめに、大学生736人(出生時の性別が男性313人、女性423人)を対象に心理学的調査を実施した。具体的には、性的に魅力を感じる相手、恋愛感情を抱く相手など「関心のある性」についての質問や、自分の性別をどう思っているか、その性別として自分らしい生活が送れる自信があるかといった「現在の自分自身」についての質問などを行い、その解答を点数化した。
その結果、GIを示すスコアは広く分布しており、出生時の性別と自分が認識している性が同じである性別同一感について多様性があることがわかった。同様に、性的指向のスコアにもばらつきが多く、出生時の性別に対する異性だけを性的指向の対象としていたのは、「出生時に男性」の80%、「出生時に女性」の60%だった。
非典型的なこころの性を持つ人の一部でゲノム配列に4つの多型、関与する可能性
次に、非典型的なGIスコアもしくは性的指向スコアを示した80人を対象に遺伝学的検査を実施した。対象者から唾液を採取し、次世代シークエンサーで解析。すでに解析されている日本人一般集団のデータと比較した。その結果、非典型的なこころの性を持つ人のゲノム配列に4つの多型を一般集団より高い頻度で見出した。しかし、これらの多型を持つ人の割合は低く、この遺伝子変化だけでこころの性の多様性を説明することはできなかった。
これまで、LGBTQ+など非典型的なこころの性を持った人は、社会の中の特別な存在であると考えられていたが、今回GIと性的指向に大きなバリエーションがあることがわかった。またその一部に遺伝的因子が関与する可能性があることもわかった。「これらの結果は、社会が単純に「LGBTQ+の人々」と「それ以外の人々」の2群に分けられないことを示している。GIや性的指向の多様性を規定する遺伝的因子については、今後の研究が必要だ」と、研究グループは述べている。
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・成育医療研究センター プレスリリース