東京近郊の16歳児・約2,000人を対象にコロナ禍がメンタルヘルスに与えた影響を検討
国立国際医療研究センター(NCGM)は11月22日、コロナ禍で思春期世代のメンタルヘルスが増悪することを明らかにしたと発表した。この研究は、同センター国際医療協力局グローバルヘルス政策研究センターの細澤麻里子主任研究員、東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センターの山口智史研究員および西田淳志センター長、東京大学大学院 医学系研究科脳神経医学専攻臨床神経精神医学講座の笠井清登教授、安藤俊太郎准教授、米国フォーダム大学のJ.DeVylder博士らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry」電子版と「Journal of Child Psychology and Psychiatry」電子版に掲載されている。
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世界的に、コロナ禍における思春期世代のメンタルヘルスの悪化が報告されてきた。一方、これまでの研究ではコロナ禍前との比較がなかったり、思春期の発達に伴う自然なメンタルヘルスの変化と区別することが難しかったりと、コロナ禍による影響を十分に評価できていなかった。
そこで研究グループは、コロナ禍をまたいで実施された東京近郊の一般思春期児童の約2,000人の縦断調査データ(東京ティーンコホート)の16歳時調査のデータを用いて、コロナ禍が思春期世代のメンタルヘルスに与えた影響について分析した。さらに、性別・世帯収入・コロナ禍の時期によって、この影響が異なるのかについても検討した。
コロナ禍中はメンタルヘルス指標が増悪、特に男子で顕著
その結果、16歳時調査をコロナ禍中(2020年3月~2021年9月)に実施した群は、コロナ禍前(2019年2月~2020年2月)に実施した群に比べ、メンタルヘルス指標(抑うつ症状および精神病様症状)が、年齢による自然な変化を上回る増悪を認めた。さらに、この増悪は女子よりも男子でより顕著であることが判明した。
コロナ禍2年目に入るにつれ男子は悪化、女子は学校再開で同水準に
さらに、抑うつ症状についてコロナ禍の時期別に検討した結果、男子では、学校閉鎖期間後の2020年6月~2021年9月にかけて徐々に増悪した。一方、女子では、学校閉鎖期間(2020年3~5月)に抑うつ症状が一時的に改善したが、学校が再開された後にはコロナ禍前と同水準に戻ったという。
これらは、コロナ禍が2年目に入るにつれて、特に思春期男子のメンタルヘルスが悪化したことを示している。
思春期のメンタルヘルスに対する支援策の充実が重要
今回の研究により、コロナ禍による思春期世代のメンタルヘルスへの影響は、日本では特に男子において影響が大きかったことが明らかとなった。長く続いた学校生活における感染予防のための活動制限(部活動の自粛など)や、援助希求に対するジェンダー規範などが結果に影響した可能性も考えられる。
「今後、援助希求をしやすい環境づくりを含めた思春期世代のメンタルヘルスに対する支援策を充実させていくと同時に、コロナ禍が子ども達のメンタルヘルスに与えた影響について長期的に見ていく必要がある」と、研究グループは述べている。
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・国立国際医療研究センター プレスリリース