腸内環境改善のプレバイオティクス、多種多様な疾患に効果の可能性
藤田医科大学は11月20日、プレバイオティクスを用いた食物アレルギー予防に関する研究成果を発表した。この研究は、同大消化器内科学講座、医科プレ・プロバイオティクス学講座、ウェルネオシュガー株式会社、帝人株式会社の研究グループによるもの。研究成果は、「BMC Microbiology」オンライン版に掲載されている。
近年、食物アレルギーは明確に増加し、国民の3人に1人が何らかのアレルギーを持っているとされている。特定の食品の摂取により、時に激しいアレルギー反応をおこす食物アレルギーは、著しいQOLの低下につながる。
一方、腸内環境への着目とともに、腸内環境を改善する成分であるプレバイオティクス、プロバイオティクスが注目されている。これらは、腸内環境の改善にとどまらず、がん、免疫・代謝性疾患、骨粗鬆症、精神疾患など多種多様な疾患に効果を発揮する可能性が示唆されている。一方で「どのようなプレバイオティクス・プロバイオティクスを使用すればいいのか?」という問いに対する十分な研究成果はない。
プレバイオティクス「ケストース」「イヌリン」、食物アレルギーへの影響は?
今回の研究では、食物アレルギーの予防に関し、低分子のフラクタンであるプレバイオティクス「ケストース」と高分子フラクタン(水溶性食物繊維)のプレバイオティクス「イヌリン」の組み合わせによるアプローチにおいて、食物アレルギーの発症にどのような影響が見られるかについて研究を実施した。
ケストース+イヌリン併用マウス、特に直腸温低下・IgA減少を抑制
研究では、事前にプレバイオティクスを摂取したマウス群とプレバイオティクスを摂取していないマウス群に、食物アレルギーのアレルゲンとなるアルブミンを投与。食物アレルギースコア、腸管における炎症性サイトカインの発現、腸内細菌叢などの検討を行った。プレバイオティクス摂取群は(1)ケストース、(2)イヌリン、(3)ケストース+イヌリンを摂取する3つのグループに分けてそれぞれ比較した。
その結果、事前にプレバイオティクスを摂取した群は食物アレルギーの指標となる行動異常、直腸温低下、IgA減少、腸内炎症性サイトカインmRNA(IL-10など)の発現がみられなかったことから食物アレルギーの発症を予防していることが示唆された。さらに、プレバイオティクス摂取群の3グループを比較したところ、(3)ケストース+イヌリンを併用したグループでは特に直腸温の低下やIgA減少が抑制されたことを確認した。
働く腸内細菌が異なるプレバイオティクス、併用で相乗的に予防効果発揮か
また、アレルギーが予防された群は、アレルギー発症群に比べ、ケストースもしくはイヌリンが特異的に働く腸内細菌が存在することがわかった。このことは、ショートチェーンとロングチェーンのフラクタンはどちらも食物アレルギーの発症を予防し、また、働く腸内細菌が異なるために併用することで相乗的に予防効果を発揮することが考えられる。
今後、他プレバイオティクス併用・別疾患での効果検証を予定
今回の研究により、食物アレルギー発症予防に効果的なプレバイオティクスの組み合わせが明らかとなった。食物アレルギーは近年、さまざまな疾患との関連が報告されている。今後は、食物アレルギーの発症予防・改善のみならず、他のプレバイオティクスとの併用や食物アレルギー以外の疾患での効果を検証する研究を進めるとともに、将来的な医学領域への展開を目指す、と研究グループは述べている。
なお、今回の研究で用いた、ウェルネオシュガーの3糖オリゴ糖ケストースと、帝人株式会社のチコリという野菜由来の水溶性食物繊維イヌリンを併用して摂取する技術は、特許出願中だとしている。
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・藤田医科大学 プレスリリース