17日に京都市で開かれた日本薬剤疫学会学術総会で調査結果を報告した。調査は、日本製薬工業協会加盟の71社と製薬協加盟企業以外で新薬のRMPを作成している製薬企業45社の計116社を対象に実施したもの。その結果、77社(66.3%)から回答があり、RMPの作成実績があったのは72社と、多くの企業がRMPの追加のリスク最小化活動として医療従事者や患者向け資材を作成していた。
患者や医療従事者向け資材等の作成に当たって患者や市民の意見を取り入れるユーザーテストについて、実施経験のある製薬企業は72社中4社(6%)と少なかった。
「より良いRMP活動のために患者の立場の意見を聞くことは必要と思うか」との質問には77社の43%が「思う」、43%が「どちらかというと思う」と回答し、8割以上が前向きな姿勢を示した。
PPI活動として患者との関係づくりを推進する専門部署があると回答した製薬企業は77社のうち27%。具体的な取り組みとして疾患啓発のための患者向けサイトや市民公開講座、患者会への参加、患者から話を聞く機会などの取り組みが挙がった。
笠井氏は「RMPは製薬企業だけの問題ではなく、医療従事者や患者も含めて薬に関わる全ての人々の協力があってこそ成り立つ」と述べ、RMP活動に患者や市民が参画する意義を説いた。
一方、医療従事者や患者にRMPや資材の情報がどの程度伝わっているのかを5段階で評価してもらったところ、医療従事者に「十分に伝わっている」「ある程度伝わっている」と回答したのは72社のうち71%で多数を占めた。
患者に「十分に伝わっている」「ある程度伝わっている」と回答したのは42%と少なく、「どちらともいえない」が43%と多かった。医療従事者にはMRを介して説明できるのに対し、患者には医師等を介した間接的な情報提供となるため、反応を確認できないという理由が挙がった。
RMPのリスク最小化活動の効果を評価する指標を聞いたところ、▽副作用の発現状況▽自社の資材配布状況――と回答する製薬企業が多かった。効果指標として、▽医療従事者や患者の認知度▽処方への反映▽必要な検査の実施状況――などを活用する製薬企業はほとんどなかった。
「リスク最小化活動の実施と評価に関する日本の規制当局の具体的な指針やガイダンスがあると良いと思うか」との質問には、77社のうち44%が「思う」、31%が「どちらかというと思う」と回答した。
笠井氏は「一律の基準は設けにくいとの意見もあった。医薬品の特性やリスクの程度に応じた基準や方法を設定する必要があるのではないか」と語った。