ネット情報の信頼性実態、科学的な方法論で記述した研究はなかった
東京大学は11月14日、日本語で書かれた、食事と栄養に関するオンライン情報の多くは、編者や著者を明記していない、広告を含んでいる、参考文献がないという問題があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の村上健太郎教授、篠崎奈々特任助教、奥原剛准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「JMIR Formative Research」に掲載されている。
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現在、食事や栄養に関連する情報は、インターネットを含めてさまざまなメディアを通じて容易に入手できる。残念ながら、この種の情報の信頼性は必ずしも保証されておらず、その結果、一般の人々に広く発信されるべき情報が十分に広まっていなかったり、逆に科学的に信頼できない情報が広まっていたりしているという現状がある。しかし、このような実態を十分に科学的な方法論を用いて記述した研究は存在しない。
日本語での食事・栄養のネット情報、網羅的・系統的に収集・分析
そこで今回の研究では、日本語で書かれた、食事と栄養に関するオンライン情報を網羅的かつ系統的に収集・分析した。研究では、まず、Googleトレンドを用いて日本語で書かれた、食事や栄養に関するオンライン情報(ブログなど)を抽出するため、それらに関連するキーワードを特定。このプロセスでは、638のシードターム(もととなる用語)の特定、約1,500組の「検索キーワード」と「関連キーワード」(どちらもGoogleトレンド上の呼び名)の特定、そのうち上位約10%にあたる160組の「検索キーワード」と「関連キーワード」の特定、107の「検索に用いるキーワード」の特定を行なった。その後、Google検索を用いて、関連するオンライン情報を抽出した。
主な発信源はIT企業・マスメディア27.8%、食品企業14.5%
その結果、食事や栄養に関するオンライン情報(コンテンツ)が合計1,703個抽出された。コンテンツの中で最も多かったテーマは、「食べ物・飲み物」(22.9%)。2番目以降は「体重管理」(21.5%)、「健康効果」(15.3%)、「食」(13.8%)だった。食事や栄養に関するオンライン情報の主な発信源で最も多かったのは「IT企業・マスメディア」(27.8%)で、次いで「食品企業(生産・小売)」(14.5%)、「その他」(13.9%)、「医療機関」(12.6%)の順だった。
編者・著者の明示46.4%、1種以上の広告掲載57.7%、引用文献あり40.0%
食事や栄養に関するオンライン情報の特性では、編者または著者の存在を明示しているコンテンツは半数以下(46.4%)だった。一方、半数以上(57.7%)のコンテンツにおいて1種類以上の広告が掲載されていた。また、引用文献があるコンテンツは40.0%に留まった。
体重管理のコンテンツ、編者・著者の明示/広告掲載「多」、参考文献あり「少」
さらに、コンテンツのテーマや発信源は、編者または著者の存在を明示していることや広告が付随していること、参考文献の有無という各特性と統計学的に有意に関連していた。特に、体重管理をテーマとしたコンテンツは、編者や著者の存在の明示(57.9%)、広告の付随(74.6%)が多い一方で、参考文献の引用(35.0%)は少ないという結果だった。また、医療機関からのコンテンツは、引用文献が少ない傾向にあった(29.0%)。
他の主要マスメディアなどや他言語情報でも同様か、検証必要
今回の研究結果について、研究グループは「日本語で書かれたオンラインの食事・栄養関連情報におけるオーサーシップ、利益相反(広告)、科学的信頼性に関して懸念を抱かせるものであると言える」と、述べている。今後の課題としては、できるだけ多くのテーマでオンラインコンテンツの精度や質を調べるとともに、今回の知見が他の主要なマスメディアやソーシャルメディアを通じて得られる食事・栄養関連情報や、他言語の情報にも同様にあてはまるどうかを検証する必要があるという。同研究成果は、食事と栄養に関するオンライン情報をどのように扱っていくべきかを科学的に議論・検討するための基礎資料となることが期待される、と研究グループは述べている。
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