ナスのヘタに含まれる「9-oxo-ODAs」の子宮頸がんに対する効果を検証
名古屋大学は11月16日、ナスのヘタに含まれる天然化合物「9-oxo-octadecadienoic acid(9-oxo-ODAs)」が、子宮頸がん細胞に対して抗腫瘍効果をもたらすことを報告したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科産婦人科学の茂木一将大学院生、吉原雅人病院助教、梶山広明教授、同ベルリサーチセンターの小屋美博博士、那波明宏教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
子宮頸がんは子宮頸部の粘膜上皮がヒトパピローマウイルス(HPV)に感染し、前がん病変である子宮頸部異形成の状態で数年~数十年を経て浸潤がんとして発症する。子宮頸部異形成や子宮頸がんの発がんや進行のメカニズムにおいて、HPV由来のE6やE7タンパクが機能していることが多数報告されているが、これらのHPV由来タンパク質やそれらの発がんメカニズムを標的とした治療法はいまだ臨床応用されていなかった。
一方、日本ではナスのヘタがHPV関連疾患「尋常性疣贅」に対して民間療法薬として使用されていた背景がある。研究グループは過去に、ナスのヘタのエタノール抽出物が卵巣がん細胞や尖圭コンジローマを抑制することを報告しており、このエタノール抽出物に含まれる有効成分が9-oxo-ODAsであることを同定していた。今回の研究では、ヒト細胞株やモデルマウスを用いて、これらと同じHPV関連疾患である子宮頸がんに対する9-oxo-ODAsの抗腫瘍効果を検討した。
9-oxo-ODAs投与で、ヒト子宮頸がん細胞増殖抑制/アポトーシス促進
ヒト子宮頸がん細胞(HeLa、SiHa)に9-oxo-ODAsを投与し、細胞増殖やアポトーシス誘導への影響を解析したところ、ヒト子宮頸がん細胞の増殖が濃度依存的に抑制され、アポトーシス細胞数を増加させることが判明した。
そこで、9-oxo-ODAs投与後の子宮頸がん細胞株に対して網羅的にRNA発現やタンパク質を解析したところ、細胞周期の経路やアポトーシスに関与するp53経路が変化し、サイクリン依存性キナーゼ1(CDK1)タンパク質発現が減少していることが判明した。また、9-oxo-ODAs投与後の子宮頸がん細胞株ではHPV由来のRNA、タンパク質発現を減少させることも判明した。
モデルマウスで同様の効果確認、9-oxo-ODAsの抗腫瘍メカニズムも判明
マウスモデルを用いた実験では、9-oxo-ODAsの投与は、マウスに移植した子宮頸がん細胞の転移形成や増殖を抑制することが確認された。これらの結果から、9-oxo-ODAsは、CDK1やHPVオンコプロテインの発現を抑制することでHPV陽性ヒト子宮頸がん細胞の細胞周期停止、アポトーシスを誘導し抗腫瘍効果を示すと考えられた。
9-oxo-ODAsがHPV陽性疾患に対する治療薬となる可能性
今回の研究により、9-oxo-ODAsがHPV陽性疾患に対する有望な治療薬となり得ることが示された。「これまでの研究結果から、9-oxo-ODAsは生体への毒性を抑えたまま抗腫瘍効果を発揮する可能性があり、その作用機序をより詳細に調査することで、臨床治療に応用することを目指していく」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・名古屋大学 研究成果発信サイト