核にコードの原因遺伝子367種類とミトコンドリア遺伝子全周をカバーする検査
順天堂大学は11月14日、ミトコンドリア病研究の一環として行ってきたミトコンドリア病遺伝子パネルシーケンスを保険適応検査として実施すべく検査実施体制を整備、厚生労働省の令和4年度診療報酬改定においてミトコンドリア病の遺伝学的検査が保険収載され、2023年11月1日より、契約施設からの検査依頼に対する受付を開始したと発表した。これは、同大大学院医学研究科難病の診断と治療研究センター(難治性疾患診断・治療学)の岡﨑康司教授、同大医院臨床検査部(ISO15189認証取得)らの研究グループによるもの。同成果は、第22回日本ミトコンドリア学会年会で発表された。
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同研究グループは十数年にわたり、全国から寄せられるミトコンドリア病疑い症例の遺伝子診断に取り組んできた。ミトコンドリア病は先天性代謝異常症として最も発症頻度の高い疾患で、5,000人の出生あたり1人が発症すると考えられている。国内の年間出生数を約100万人とすると毎年約200人のミトコンドリア病の赤ちゃんが誕生し、その半数以上の遺伝子検査が同大で行われてきたという計算になる。
従来の臨床検査項目にはミトコンドリアDNAの一部の配列を調べる検査しか存在しなかった。ミトコンドリア病の原因遺伝子はミトコンドリアDNAだけでなく、核のDNAにも多数存在する。そこで研究グループはこれらの原因遺伝子を効率良く一括で調べることのできる「ミトコンドリア病遺伝子パネルシーケンス」を開発し、効率的な遺伝子診断の仕組みを整えてきた。研究グループが開発したミトコンドリア病遺伝子パネルは、核のDNAにコードされた合計367個の原因遺伝子のほか、ミトコンドリアに存在するミトコンドリアDNAの全周(16.6kb)も対象としている点が特徴である。これまでに600症例を超える解析が完了し、その有効性が証明されている。
研究としての実施では、449症例中105件で遺伝子診断に至り35件でVUS発見の実績
研究グループが、2020年1月~2022年12月の3年間に解析した449症例のデータを分析したところ、この検査方法で遺伝子診断がついた症例は105件(23.4%)だった。このうち核遺伝子変異を原因とする症例が38件(8.5%)、ミトコンドリアDNA変異を原因とする症例が67件(14.9%)だった。その他、臨床的意義不明バリアントをもつ症例が35件(7.8%)見つかり、これらの症例はさらに詳細な解析に進んでいる。
研究同意患者については詳細な解析を実施、診療から研究までカバーできる体制構築
ミトコンドリア病遺伝子検査の概要として、同臨床検査部で保険適応のミトコンドリア病遺伝子検査として遺伝子パネルシーケンスを実施し、既知変異を報告する。その後、研究に同意されている患者については難病の診断と治療研究センターが行う研究において、より詳細に解析が行われる。
AMED難治性疾患実用化研究事業におけるミトコンドリア病研究プロジェクト(通称:AMED村山班)の代表としてチームを長年率いてきた難病の診断と治療研究センター村山圭教授が、2023年7月1日より順天堂医院小児科・思春期科での外来診療を開始しており、ミトコンドリア病の診療から研究までをカバーできるようになった。
順天堂医院におけるミトコンドリア病遺伝子検査(遺伝子パネルシーケンス)は保険診療の対象だが、本検査のみでは遺伝子診断がつかない患者も多数存在する。「採血の際に研究参加への同意を表明(署名)した患者に対しては、難病の診断と治療研究センターがミトコンドリア病研究として遺伝子解析を引継ぎ、全ゲノムシーケンス・RNAシーケンス・機能解析実験などより詳細な解析を行い、遺伝子診断確定を目指していく」と、研究グループは述べている。
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