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痛風に関わる分子hMCT9、一塩基多型による機能の違いを解明-北大

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2023年11月13日 AM09:30

痛風との関連が示唆されるクレアチニントランスポーターhMCT9、機能詳細は不明

北海道大学は11月8日、部位特異的変異導入法およびアフリカツメガエル卵母細胞を用いた発現系を使用して、ヒトモノカルボン酸輸送体9()の一塩基多型により輸送特性が変動することを解明したと発表した。この研究は、同大大学院生命科学院博士課程の山口敦史氏と同・薬学研究院の小林正紀教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Life sciences」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

高尿酸血症は遺伝的要因や生活習慣を含む環境要因が関与して発症するとされており、体内の尿酸が蓄積することで関節炎を主とした痛風発作が引き起こされる疾患。遺伝的な要因としては尿酸産生を亢進させる遺伝子変異のほかに、尿酸トランスポーターの機能低下を引き起こす遺伝子変異も知られている。それらの遺伝子変異による尿酸輸送能の違いが、高尿酸血症や痛風の発症に関与すると考えられている。

hMCT9はクレアチンを細胞の内外へと輸送するトランスポーター。研究グループはこれまでに、細胞外のpHが高い時や、Na+が存在する時にクレアチンの輸送活性が増大することを明らかにしている。加えて、クレアチンの濃度に応じて異なる2つの親和性を示すことも見出している。また、全ゲノム関連解析というヒトゲノム全体の一塩基多型と疾患との関連性を解析する研究により、hMCT9が血中尿酸値と関連することが示唆されていた。

hMCT9の一塩基多型のうち、稀少な変異であるrs550527563では、93番目のロイシン残基がメチオニン残基に変異しており(L93M)、早発型の痛風と関連することが報告されている。別の一塩基多型のrs2242206は、258番目のスレオニン残基がリジン残基に変異する多型であり、日本人痛風患者の約4割で認められている。この遺伝子変異は腎負荷型の痛風と関連することが報告されている。

一方、hMCT9の生体内での役割や血中尿酸値との関連性に関する基礎的な知見は不足している。しかし、上述のような遺伝子解析により、hMCT9の一塩基多型がその機能に何らかの影響を及ぼすことで、痛風発症に関連すると推察される。加えて、先述の2つの一塩基多型はトランスポーターを構成しているアミノ酸残基の変異が生じていることから、トランスポーターとしての機能に影響していると考え、研究グループはhMCT9の野生型(WT)と基質輸送機能を比較した。

アフリカツメガエル卵母細胞を用いてhMCT9の一塩基多型の発現系構築に成功

研究ではhMCT9の2つの一塩基多型を評価するため、部位特異的変異導入法を用いて変異体(L93MとT258K)を作製。hMCT9 WTと作製したL93M、T258Kの遺伝子をアフリカツメガエル卵母細胞に直接注入することで、hMCT9 WT、L93M、T258Kを発現させた卵母細胞を得た。この卵母細胞を用いて放射標識されたクレアチンの輸送活性を測定し、WTと比較することで一塩基多型の影響を評価した。

その結果、hMCT9 WT、L93M、T258Kはアフリカツメガエル卵母細胞に発現しており、全ての発現系でクレアチンを輸送することが示された。これにより、2つの一塩基多型(L93MとT258K)の発現系の構築に成功した。

hMCT9の2つの一塩基多型で輸送特性の変動を確認、痛風との関連も考察

次に、一塩基多型による影響を評価するためクレアチン輸送活性の比較を行った。その結果、hMCT9 L93MではhMCT9 WTと比較して輸送活性が低下する傾向にあり、その機能が低下していることが示唆された。また、hMCT9 WTは高いpHやNa+の存在により、輸送活性は増大する。

そこで、pHやNa+の影響を変異体で確認したところ、hMCT9 T258KではNa+の有無にかかわらず、同程度の輸送活性を維持していた。さらにクレアチンに対する親和性を比較したところ、hMCT9 WTでは異なる2つの親和性を示した一方で、hMCT9 T258Kでは1つの親和性のみ示し、親和性の程度もhMCT9 WTの異なる2つの親和性の中間的な値を示した。このことから、hMCT9 T258KではNa+に対する感受性や基質親和性が変動することが明らかとなった。

hMCT9 L93Mでは早発型の痛風との関連が報告されている。同研究により、hMCT9 L93Mにおける輸送機能の低下が、早期に痛風を発症する要因ではないかと推察される。また、hMCT9 T258Kでは腎負荷型の痛風と関連することから、hMCT9が尿酸の腎外排泄に関与しているのではないかと報告されている。同研究ではhMCT9 T258KがNa+感受性や基質親和性に関与していることから、研究グループは、腎以外におけるhMCT9周辺の環境要因による影響を受けていると考察した。

hMCT9をターゲットとした痛風治療薬の創製に期待

今回の研究により、hMCT9の一塩基多型がその機能に直接的な影響を及ぼすことが明らかとなった。これらの機能変動による血中尿酸値の調節メカニズムは未解明だが、さらなる研究を推進することで、高尿酸血症や痛風の病態の一端を解明できると考えられる。「将来的にはhMCT9をターゲットとした新規の高尿酸血症治療薬の創製に寄与することが期待される」と、研究グループは述べている。

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