全国103の医療機関から359人の小児AML患者が参加した臨床試験の結果を公表
国立成育医療研究センターは11月8日、小児急性骨髄性白血病(AML)に対する臨床試験の結果を発表した。この研究は、国立成育医療研究センター小児がんセンターの富澤大輔氏、京都大学 大学院医学研究科の足立壮一氏、平松英文氏、田中司朗氏、三重大学医学部附属病院の岩本彰太郎氏らを中心とする「日本小児がん研究グループ(JCCG)」によるもの。研究成果は、「Leukemia」にオンライン掲載されている。
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小児AMLは小児白血病で2番目に多く、国内では年間およそ180例が発症する。治療はシタラビンを中心とした抗がん剤を複数組み合わせた多剤併用化学療法が行われるが、白血病細胞固有の染色体・遺伝子異常の種類、初回および2コース目の化学療法後の骨髄中の残存白血病細胞の程度によってリスク・グループ分け(リスク層別化)を行い、そのまま化学療法を継続するのか、より強力な治療法である同種造血幹細胞移植を実施するのかを決定する。世界での小児AMLの無イベント生存率は55~60%、全生存率は65~75%とされており、さらなる治療成績向上が求められる一方で、特に同種造血幹細胞移植の実施はさまざまな晩期合併症の原因にもなるため、適切なリスク層別化による最適な治療選択が必要とされている。
同試験では、初回の化学療法コースにおいてシタラビンの大量療法を導入し、従来の通常量療法を用いる方法と比較して治療成績の向上を目指したほか、フローサイトメトリー法を用いて、より微小なレベルの残存白血病を確認する「MRD(微小残存病変)の検出」が再発予測に有用か否かを調べることを目的とした。JCCGによって2014年から開始され、2018年までの4年間で全国103の医療機関から、0~18歳までの359人の小児AML患者が登録された。その後、2022年まで治療後の経過が観察され、今回その結果がまとめられた。
3年無イベント生存率/全生存率は過去最良、大量シタラビン療法で治療成績変化なし
3年無イベント生存率は63.1%、3年全生存率は80.3%と、過去に報告された小児AMLの治療成績の中でも最良の成績が得られた。一方で、初回の化学療法コースにおける大量シタラビン療法を用いた場合と、従来の通常量シタラビンを用いた場合との無作為比較試験による優劣については治療成績に差がなかった。つまり、従来の化学療法を強めるだけでは、小児AMLの治療成績の向上は難しいことがわかった。
初回/2回目化学療法後のMRD陽性患者、陰性に比べ治療成績不良
さらに、同試験ではMRDの検出が再発予測に有用なのかについて、全国の参加医療機関からの患者検体を三重大学および京都大学に集めて調べた。その結果、初回または2回目の化学療法コース後にMRDが陽性だった患者は、陰性だった患者と比較して治療成績が大きく劣ることが明らかになった。
MRDを用いた再発予測が、治療成績向上と晩期合併症軽減につながる可能性
今回、過去に世界中で報告された小児AMLの治療成績の中でも最良の成績が得られたほか、MRDが最も強力な再発予測因子であることが明らかとなった。
「今後、同試験の結果に基づいて、MRDを用いた正確な再発予測に基づき、新規薬剤の導入も含めた適切な治療選択を行うことで、さらなる治療成績の向上と晩期合併症の軽減の両立につながることが期待できる」と、研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース