異常なアミロイドタンパク質が臓器や組織に蓄積、死亡率が高い難治性疾患
Alnylam Japan 株式会社(以下、アルナイラム)は11月7日、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(TTR-FAP)の患者当事者・家族の健康関連 QOLとその関連要因に関する調査研究を行い、その結果を発表した。この研究は、同社と希少・難治性疾患分野で活動する特定非営利活動法人 ASridの西村由希子理事長、江本駿研究員らが行ったもの。研究成果は、第41回日本神経治療学会学術集会で発表された。
TTR-FAPは、TTR遺伝子の変異が原因で生じる進行性の難治性疾患で、死に至ることも多い疾患である。遺伝性ATTRアミロイドーシス、FAP(Familial Amyloid Polyneuropathy)とも呼ばれている。TTRタンパク質は主に肝臓で産生され、ビタミンAの輸送体として働く。TTR遺伝子に変異が生じると、異常なアミロイドタンパク質が蓄積して、末梢神経や心臓などの臓器・組織を傷つけ、治療が難しい末梢神経障害、自律神経障害および/または心筋症などを引き起こす。TTR-FAPの患者数は全世界で約5万人とされており、障害発生率と死亡率はきわめて高く、大きなアンメットニーズが存在する。診断からの生存期間の中央値は4.7年で、心筋症を発症する患者では3.4年とさらに短くなっている。
20歳以上の当事者25人と家族15人の回答を解析
調査は、患者当事者の健康関連QOL(身体、精神、役割/社会的側面)とその関連要因を探索的に明らかにすることを目的に行われた。2021年12月~2022年6月までに、複数の患者団体から参加者を募り、質問票による定量調査、インタビューによる定性調査を実施した。最終的に、TTR-FAPと診断を受けた20歳以上の当事者25人と家族15人の回答を分析した。
精神関連QOLの高さに、「家族機能の高さ」「不安の低さ」「ADLの高さ」が関連
定量調査における健康関連QOLに関しては、身体的側面ならびに役割/社会的側面におけるQOLは国民平均よりも有意に低く、精神的側面でのQOLは国民平均と有意な差はなかった。また、精神的側面の得点は有意に「家族機能」と中程度の正の相関を示した一方、役割/社会的側面の得点は有意に「不安」と中程度の負の相関となり、さらに移乗動作や着替え、食事といったADLとは有意な中程度の正の相関を示した。
患者の不安は、「改善困難な症状がある」「医療情報・アクセスに地域差を感じる」場合に強い
インタビューによる定性調査では、患者当事者の認識する「家族機能」に関するスコアは、「家族の疾患への理解」や「情緒的なサポート」「疾患や現状の情報取得と共有」「介助/介護などの生活支援」がある場合に高かった。また、患者当事者の「不安」は、症状の進行と関連し、治療(肝移植や治療薬)によって症状の進行抑制が効いている場合には低い一方で、既発症の症状で改善困難な症状や、眼のアミロイド沈着のように治療に関わらず進行する症状がある場合、医療情報・アクセスに地域差を感じている場合には強かった。さらに、患者当事者の中でも肝移植経験者は、新規薬剤の登場で移植患者が取り残される不安を抱えていた。
身体的、心理的、社会的、精神的な面でも支援できる仕組み作りが必要
研究成果について、同社のメディカルアフェアーズ部ペイシェントアドボカシー&エンゲイジメントの三浦愛子氏は次のように述べている。「今回の調査研究の結果から、患者さんの症状を治療するだけでなく、身体的、心理的、社会的、精神的な面でも支援できる仕組み作りが必要であることがわかった。当事者のご家族をはじめ、医療従事者や患者支援者とも協力して、患者さんのケアに対するよりホリスティックなアプローチを促進することに全力を尽くしていきたい」。
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