愛仁会明石医療センター薬剤科は、薬剤管理指導関連で約560万円算定しており、その金額は病棟薬剤業務実施加算の2.5倍に相当するという。同院薬剤科の寺沢匡史氏は、病棟薬剤業務実施加算を算定できない理由に「薬剤管理指導の時間を除き週20時間確保」という算定要件のハードルを挙げ、「薬剤管理指導と病棟薬剤業務のどちらにウエイトを置くかが話題となっており、薬剤管理指導を減らしてでも病棟薬剤業務実施加算を算定していきたい施設からの声を聞いている」と述べた。その上で、「薬剤管理指導の件数を落とすことは薬剤師の病棟業務の質を落とし、診療報酬上も減収となる」と話し、薬剤管理指導料をコンスタントに算定できるまでは薬剤管理指導を中心に業務のあり方を考えるべきとした。
同院薬剤科では、病棟薬剤業務実施加算に必要な20時間を確保するため業務改善も進めている。全一般病棟に薬剤師が常駐し、薬剤管理指導を含め病棟業務として1日7時間程度の時間を確保。医師から薬剤師へのタスクシフトでは、2022年8月から疑義照会後の処方変更に関する代行修正を行う一方、薬剤師同士のタスクシフトでは調剤室で行っている業務を病棟薬剤師が行うようにし、これら業務を病棟薬剤業務実施加算に算定することで算定要件の20時間を満たすことができたという。
さらに事務員1人を増員し、薬剤師が行っていた発注業務は完全に事務員業務とし、薬剤の返納処理などの業務も移行することでマンパワーの確保を図った。
寺沢氏は「タスクシフトは薬剤師にとってチャンス。他職種の負担を薬剤師が担うことで、薬剤師や事務員の人員増につなげられるかもしれない」と語った。
一方、病院経営の視点から多摩大学大学院経営情報学研究科の石井富美氏は、「タスクシフトにより医師の時間外業務が減り、薬剤師の時間外業務も減った」と意義を強調したが、病院職員の人数比率を見ると、薬剤師数は全体の3%にとどまるため、「全てをタスクシフトすることは難しい。薬剤師がすべき仕事、医師、看護師よりも薬剤師がしたほうが良い仕事を他職種からもらう調整が必要になる」と述べた。
マンパワーを確保するためロボティクスの活用も提案し、「本当に必要な仕事や作業なのかを考えなければならない。持参薬鑑別もシステムを使えるのではないか」と語った。