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授乳中の3~4か月児と母、愛着や社会性に関与の脳活動が同期-慶大

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2023年11月06日 AM11:52

脳同期と他者理解を含む社会性との関係示唆、乳幼児では?

慶應義塾大学は11月1日、3~4か月齢の乳児に対して親が授乳や抱っこなどの養育行動をしている際の脳活動を親子で同時計測し、授乳時に特定部位の脳活動が親子で同期していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大慶應義塾大学文学部心理学研究室、ヒト生物学-微生物叢-量子計算研究センター(WPI-Bio2Q)の皆川泰代教授、同大学グローバルリサーチインスティテュートの森本智志特任助教、秦政寛特任助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cerebral Cortex」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
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円滑な協調作業や共感性が高まっているとき、動作や身体状態(例:心拍や呼吸)の同期だけでなく、脳活動が同期することが知られている。また、自閉スペクトラム症を持つ成人ではこのような同期が得られにくいことも報告されている。しかし、これら脳の同期現象の発達変化やその個人差については多くのことが明らかになっていない。

10年ほど前からさまざまな社会場面(例:ゲーム、討論、授業)での複数者の脳活動同期について、成人を対象に研究が行われてきた。これらの研究では円滑な協力行動や作業没頭時に脳活動の同期が得られることなどが示され、脳同期と他者理解を含む社会性との関係も示唆されている。しかし、乳幼児については限られた研究しか行われていない。

3~4か月乳児87人と母親対象、授乳や養育時の脳活動を同時計測

乳児と親との親子関係は、ヒト乳児が初めて人間の相互関係性を学ぶ基礎的な拠点ともいえる。そこで今回、研究グループは、発達初期の親子関係に着目し、母親と乳児の脳の同期活動を検討した。具体的には、3~4か月乳児87人(そのうち、自閉症を持つ可能性がある乳児群16人)とその母親が授乳や抱っこをしている養育時の脳活動を親子で同時計測。別途、行った親子遊びなどの相互作用行動の評価や、その後の2歳辺りの言語や社会性の発達との関係を検討した。さらに、自閉症などの神経発達症を持つ可能性のある乳児においても同様の脳計測を行い、定型発達乳児との比較も行った。

「母子の授乳」が「抱っこ」条件より強い脳活動同期

今回の実験では、「1.母子の授乳」「2.母親の乳児抱っこ」「3.実験者の乳児抱っこ」の3条件で母子の脳活動同期について、機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いて計測した。その結果、1の授乳条件では、2と3の抱っこ条件よりも強い脳活動同期が多くの脳部位間で見られた。特に、母親の眼窩前頭部と呼ばれる母子愛着に関与する脳部位が、多くの乳児の脳部位と同期していた。乳児側は、左の側頭頭頂接合部(TPJ)が多くの母親の脳部位と同期していた。TPJは、他者の心の理解や意図推定を含む社会脳の1つとして知られている。

脳の同期が強いほど、親子愛着・2歳辺りの言語発達指標が高まる

乳児は、自閉症を持つ可能性のある乳児群とそれ以外の乳児群において、特に、同期の程度に差は見られなかった。これらの同期は、その程度が高いほど、親子遊びでの愛着を示す行動指標や自由遊びでの乳児の発話頻度がより高くなるといった正の相関が見られた。さらに、脳同期とその当時の言語発達ばかりでなくその後の2歳辺りの言語能力とも正の相関が見られた。

親子のコミュニケーションと個人の脳活動・脳同期の関係モデリングを目指す

ヒトは他者の行動や心の状態を予期したり理解したりしながら他者と社会的相互作用を行う。そのような円滑な予期や理解ができると、動作、目の瞬き、心拍、呼吸ばかりでなく脳活動がシンクロすなわち同期することが知られている。相手と親密であるほど、同期も強くなることが知られている。今回の研究では、授乳中の3~4か月児と母において愛着や社会性に関与する脳部位で同期が見られることを初めて示した。この結果は、授乳という触覚、嗅覚など五感をフル活用する養育行動が親子の関係性を良好にする可能性を示す。親子関係や子どもの発達における授乳の重要性を改めて示したとも言える、としている。

研究グループは今後、親子遊びなど、より複雑な親子相互作用の脳の同時計測を行い、親と子のコミュニケーション信号のやり取りと個人の脳活動や脳同期の関係をモデリングすることを目指す。この知見は、子どもへのどのような働きかけがより良い発達につながるのか、という示唆ばかりでなく、ヒトとAIやロボットとの良好なインタラクションへも有益なヒントにもなる、と研究グループは述べている。

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