造影CT画像から膵臓がん疑い所見を検出する技術を開発していた
富士フイルム株式会社は11月1日、腹部の非造影CT画像からAI技術を活用して膵臓がんが疑われる所見の検出を支援する技術を開発し、今年4月に開発した膵臓がんの検出を支援する技術の適用対象を、造影CT画像から非造影CT画像へ拡大したと発表した。この研究は、同社と神戸大学大学院医学研究科の児玉裕三教授、村上卓道教授らの研究グループによるもの。
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膵臓がんは、初期には自覚症状が出にくく早期発見が難しい病気で、腹痛や体重減少などの自覚症状が現れた段階では、周辺組織への浸潤を伴う進行がんとなっているケースが多いため、がんと診断されてから5年後の相対生存率は12.5%と、がんの中でも生存率の低いがんの一つとなっている。また、膵臓がんによる国内死亡者数は年々増加傾向にあり、2021年には3万8,000人を超え、肺がん、大腸がん、胃がんに次いで第4位である。予後を改善するためには早期発見が極めて重要だが、膵臓がんを初期の段階で検出するには、直接所見である腫瘤だけでなく、膵臓の萎縮や膵管の拡張・狭窄などの間接所見にも着目する必要がある。しかし、膵臓はほかの臓器と比べて構造が複雑であることから、間接所見の発見が難しいという課題がある。
研究グループは、CT画像から膵臓がんの早期発見を支援するAI技術の開発を目指して2021年8月に共同研究を開始し、今年4月には、腹部の造影CT画像から膵臓がんが疑われる所見を検出する技術を開発した。
非造影CT画像約1,000症例をAI学習し、腫瘤・膵萎縮・膵管拡張の検出に成功
今回、約1,000症例の非造影CT画像をAIに学習させ、膵臓がんの直接所見である腫瘤、間接所見である膵萎縮・膵管拡張を検出する技術の開発に成功。造影CT画像に比べてコントラストが低く不明瞭な非造影CT画像にも対応し、膵臓がんの検出を支援する技術の適用対象を拡大させた。これにより、人間ドックなどでもこの技術が活用され、より初期の段階での膵臓がんの発見につながることが期待できる。
有効性検証を進めるとともに、膵臓がんリスク評価技術の開発にも取り組む
同社は今後、この技術の社会実装に向けた有効性検証を進めるとしており、さらに将来的には、膵臓がんが発生する前段階で見られる膵臓の腫大や萎縮などの軽微な形状変化を検出し、膵臓がんに罹患するリスクの高さを評価する技術の開発にも取り組んでいくとしている。「これらの技術で潜在的な膵臓がん患者を拾い上げ、早期治療による予後の改善と膵臓がん患者のQOL向上を目指す」と、研究グループは述べている。
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