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要介護認知症リスク抑制に「生活を楽しんでいる意識」が重要、国内研究で-順大ほか

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2023年11月02日 AM09:35

生活に対するポジティブな意識と認知症リスクとの関連は?

順天堂大学は10月31日、約11年間の観察研究で、「生活を楽しんでいる意識が高い」と、要介護認知症(以下、)のリスクが低いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科公衆衛生学の野田愛准教授、谷川武主任教授らの研究グループ(多目的コホート研究:)によるもの。研究成果は、「The Journals of Gerontology. Series B, Psychological Sciences and Social Sciences」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

加齢、基礎的な健康状態、社会経済的状態、ライフスタイルなどが認知症発症と関連していることがこれまでの多くの研究からわかってきている。近年注目されている要因のひとつに、心理的ウェルビーイングがある。心理的ウェルビーイングと循環器系などの他の慢性疾患との関連は報告されていたが、認知症との関連を検討した研究はまだ少ない状況だ。心理的ウェルビーイングの一側面である「生活を楽しんでいる意識を有する」ことで、周囲との関わりが肯定的になると考えられており、生活を楽しんでいる意識は高齢者の運動能力との関連が報告されている。そこで研究グループは、中年期の男女を対象として開始した多目的コホート研究において、生活を楽しいと感じるポジティブな意識とその後の認知症リスクとの関連を調べた。

国内約3万9,000人を約11年にわたって追跡調査

具体的には、平成2年(1990年)に、秋田県横手、長野県佐久、茨城県水戸、高知県中央東、沖縄県中部の5保健所(呼称は2019年時点)管内の住民約3万9,000人を対象に、2006年~2016年までの認知症調査の結果にもとづき、調査開始5年時点の「生活を楽しんでいる意識」と介護保険認定情報から把握した認知症との関連を調べた。

生活を楽しんでいる意識が高い人では、認知症リスクが有意に低い

期間中に、4,642人が認知症と診断されていることを確認。解析の結果、生活を楽しんでいる意識が低い人と比較して、中程度の人では25%、高い人では32%、統計学的有意に認知症リスクが低いことが明らかになった。

脳卒中の発症登録がなされた2009年または2012年までの認知症調査期間中に診断された認知症は2,158人で、そのうち、脳卒中既往のない認知症が1,533人、脳卒中既往のある認知症が625例だった。脳卒中既往の有無で分けた2タイプの認知症のいずれにおいても、生活を楽しんでいる意識が低い人に比べて、中程度(「ふつう」と回答)と高い人(「はい」と回答)では認知症リスクが統計学的有意に低いという結果だった。

「自覚的ストレスが高い」と、「生活を楽しんでいる意識」「認知症リスク」には関連がみられず

さらに、自覚的ストレスが生活を楽しんでいる意識と認知症の関係に与えている影響を調べるため、生活を楽しんでいる意識の調査と同時点における自覚的ストレスについても調べた。その結果、自覚的ストレスが「少ない」および「ふつう」のグループでは、生活を楽しんでいる意識が低い人と比較して、中程度ならびに高い人では認知症リスクが統計学的有意に低く、さらに脳卒中の既往のない認知症、既往のある認知症のいずれも同様だった。一方、自覚的ストレスが「多い」グループでは、生活を楽しんでいる意識と認知症リスクの間に統計学的有意な差はみられず、認知症のタイプ別に分けた解析の場合でも、生活を楽しんでいる意識と脳卒中の既往のない認知症との関連がみられなかった。

自覚的ストレスをコントロールしながら生活を楽しんでいる意識を持つことが大切

今回の研究の限界として、調査開始時点で認知機能や認知症の既往が把握できていなかったこと、認知症の分類は把握していないこと、収入レベルなどの情報が考慮できなかったこと、今回調査した生活を楽しんでいる意識は心理的ウェルビーイングを大まかに把握するものにとどまるために認知症予防のための具体的な行動を特定することが難しいことが挙げられる。一方で、研究グループは、「研究結果は、自覚的ストレスをコントロールしながら生活を楽しんでいる意識を持つことで、将来の認知症の発症予防に重要であることを強調するものだ」と、述べている。(QLifePro編集部)

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