がん患者は心房細動などの発症リスクが高いが詳細は不明だった
東北大学は10月27日、冠動脈疾患患者において、がんと心房細動の既往歴が予後不良と関連することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科循環器内科学分野の安田聡教授、後岡広太郎准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Cardiology Heart and Vasculature」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
がんの既往がある患者は寿命が延びる一方で、心臓疾患である冠動脈疾患や心房細動を合併する割合が増加している。これまでの研究からも、がん患者は心房細動や冠動脈疾患の発症リスクが高いことが明らかになっている。同時に、冠動脈疾患患者の中でがんによる死亡リスクも高いことが示されていた。しかし、がん・心房細動・冠動脈疾患の関連性については、これまで十分に研究されていなかった。
冠動脈疾患患者のがん既往10.7%、心房細動合併11.2%
研究グループは、東北大学が主催する第二次東北慢性心不全登録研究に登録された冠動脈疾患の患者3,233人(平均年齢69歳、女性23%)のデータを解析し、がんの既往、心房細動と、予後の関係を調査。その結果、冠動脈疾患患者の10.7%にがんの既往、11.2%に心房細動合併を認めた。がんの既往としては、大腸がん・胃がん・前立腺がん・肺がん・乳がんの順に多いことが明らかになった。
がん既往の心房細動合併冠動脈疾患患者に対する抗凝固薬使用は適切
がん既往がある心房細動患者で抗凝固薬が使用されるが、抗凝固薬の使用率は48.9%(ワーファリン)から83.3%(ワーファリン+DOAC)と経年的に上昇し、適切な治療が行われていることが示唆された。
一方、がんと心房細動を合併した患者はその予後が不良であり、脳卒中、塞栓症、出血などの複合イベントが多く発生した(ハザード比2.26; 95%信頼区間1.50–3.40, P < 0.001)。さらに、あらゆる原因による死亡(1.55; 1.12–2.12, P = 0.007)、がん関連の死亡(2.62; 1.51–4.54, P = 0.001)、および心不全での入院リスク(2.47; 1.54–3.96, P < 0.001)が高いことと強く関連していることが示された。
該当する患者に対しては、特に注意深い経過観察が必要
今回の研究により、がんの既往があり心房細動を合併する冠動脈疾患患者は、予後不良と関連していることが明らかになった。「がんの既往と心房細動を合併する冠動脈疾患患者の治療においては、特に注意深い観察が必要と考えられ、適切な抗凝固薬の投与など、新たな治療戦略につながることが期待される」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東北大学 プレスリリース