減量目的でのGLP-1RA使用に消化管有害事象のリスクあり
GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)を減量目的で用いている患者を対象とする調査から、消化管有害事象リスクの実態が明らかになった。他の肥満症治療薬よりも、膵炎や腸閉塞、胃不全麻痺が有意に多く発生しているという。ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)のMohit Sodhi氏らの研究によるもので、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に10月5日、レターとして掲載された。
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GLP-1RAは血糖降下薬として使われ始めたが、現在は一定の要件(肥満関連合併症を有すること)を満たす場合には肥満症治療にも用いられている。ただし実際にはその要件を満たさずに、単なる減量目的でも適応外使用されている。糖尿病患者に対して同薬を用いた場合の有害事象として消化管障害のリスクがあることは既に知られているが、糖尿病でない人でのそのリスクは明確にされていない。
Sodhi氏らは、米国の医療費データベースから、2006~2020年の無作為化サンプルデータを用いてこの点を検討した。解析の手法は、GLP-1RAであるリラグルチドまたはセマグルチドが減量目的で処方されていた人における消化管障害(膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺、胆道疾患)の発生率を、米国で肥満症治療薬として承認されているbupropion-naltrexone(ドパミン・ノルアドレナリン再取込み阻害薬とオピオイド拮抗薬の合剤)を対照薬として比較するというもの。コホート全体で、4,144人にリラグルチドが処方され、セマグルチドは613人、bupropion-naltrexoneは654人に処方されていた。
1,000人年当たりの消化管障害発生率は、膵炎についてはセマグルチド群で4.6、リラグルチド群は7.9、bupropion-naltrexone群は1.0であり、腸閉塞は同順に0、8.1、1.7、胃不全麻痺は9.1、7.3、3.1、胆道疾患は11.7、18.6、12.6だった。
年齢、性別、飲酒・喫煙習慣、脂質異常症、過去30日以内の腹部手術の既往などで調整後、bupropion-naltrexone群を基準とするハザード比(HR)は以下の通り、胆道疾患のみ非有意であり、他の3種類の有害事象に関してはGLP-1RA群のリスクが有意に高いことが明らかになった。膵炎はHR9.09(95%信頼区間1.25~66.00)、腸閉塞はHR4.22(同1.02~17.40)、胃不全麻痺はHR3.67(1.15~11.90)、胆道疾患はHR1.50(0.89~2.53)。
調整因子から脂質異常症(セマグルチド群での有病率が有意に高かった)を除外した感度分析の解析も、結果は同様だった。さらに、肥満と判定されているか否かを問わず、非糖尿病でありながらそれらの薬剤が使われていた症例での解析でも、95%信頼区間の幅が狭くなるという変化は認められたが、胆道疾患以外はGLP-1RA群で有意にハイリスクという結果は変わらなかった。
著者らは、「GLP-1RAが広く使用されているため、これらの有害事象の発生頻度自体は低いとしても一定のリスクとなり得る。減量目的でGLP-1RAの使用を考えている人は、この点に留意すべきだろう。なぜなら、糖尿病患者がGLP-1RAを用いる場合に比べて減量目的での使用では、リスク/ベネフィット比が異なると考えられるからだ」と記している。
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