角層バリアを含めた個人の要因との関連は不明だった
国立成育医療研究センターは10月24日、乳児脂漏性皮膚炎(湿疹)の発症に、出生時の角層中のセラミドやコレステロール量の低下、母の初乳中のTGF-β濃度が関連する可能性を明らかにしたと発表した。この研究は、同センター皮膚科の吉田和恵診療部長、福田理紗医師らのグループと、アレルギーセンター大矢幸弘センター長、周産期・母性診療センター三井真理診療部長、ピジョン株式会社との共同研究によるもの。研究成果は、「Journal of Dermatological Science」に掲載されている。
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乳児脂漏性皮膚炎は、乳児の約3分の1に認める炎症性疾患であり、生後1か月頃より頭部や顔面などの脂漏部位に発症し、養育者に大きなストレスを与えることがある。従来、マラセチア感染や母からの性ホルモンによる脂質分泌の増加等が原因だと考えられていたが、角層バリアを含めた個人の要因との関連についてはよくわかっていなかった。今回研究グループは、乳児脂漏性皮膚炎の発症について、セラミドなどの角層因子や母乳成分の経時的な変化との関連を調査した。
39人の親子を対象に、生後2か月まで経時的に診察・計測
同センターで、2019年7月~2020年10月までに出生した43人の子どもに、出生時(日齢0-7日)、生後1か月(±14日)、生後2か月(+1か月)の時点で医師による診察、角層因子の測定、母乳の採取を行い、経時的な測定データが得られた39人の子どもと母を対象として解析を実施した。
研究期間中、39人中22人(56%)が乳児脂漏性皮膚炎を発症し、帝王切開での出生の場合、発症が有意に低いことが明らかになった。具体的には、帝王切開で出生され乳児脂漏性皮膚炎を発症していない子どもは9人(52.9%)、発症した子どもは4人(18.2%)(P= 0.039)だった。
発症児では、出生時の角層表層のセラミドとコレステロール、母乳TGF-β1・2濃度が低い
角層因子に関して、乳児脂漏性皮膚炎を発症した子どもは、発症しなかった子どもと比較し、統計的に有意ではなかったものの、出生時の角層表層のセラミドおよびコレステロールが低下していることが明らかになった。さらに、母乳成分は、乳児脂漏性皮膚炎を発症した子どもの母の初乳中に含まれるTGF-β1・2濃度が有意に低下していることが明らかになった。
「今回の研究は、乳児脂漏性皮膚炎の発症における角層因子と母乳成分の経時的な変化を調べた世界で初めての研究だ。生後早期に角層脂質のバランスを補整することで、乳児脂漏性皮膚炎の発症を抑制し得る可能性が示唆された」と、研究グループは述べている。
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