慶應義塾大学の印南一路教授は普及に向けた課題として、使用推奨リストに記載される医薬品が基本的に若年向けで、高齢患者が多い実態を反映していないと指摘し、ポリファーマシーの観点も含めたリストを作成すべきとした。
また、医師の処方権を侵害するものと誤解されないよう、日常的にコミュニケーションをとる重要性も強調した。
医療費適正化の観点から地域フォーミュラリ推進を肯定的に捉える健康保険組合連合会の松本真人理事は、「一つの疾患に類似薬が多数ある中、なぜその薬剤を処方するのか患者を納得させるためにもフォーミュラリは公開されていることが望ましい」としつつ、患者の個別性や医療における不確実性によりフォーミュラリから逸脱するケースもあるとして、その際も患者への十分な説明が必要とした。
厚生労働省医薬局総務課の太田美紀薬事企画官は、7月に厚労省が発出したフォーミュラリ運用に関する通知で、地域フォーミュラリ作成に際して関係職種や団体の連携が必要と記していることに触れ、「(薬剤師が)収載薬選定の際の有効性、安全性、経済性評価で専門性をアピールしてほしい。フォーミュラリ推進につなげられれば、地域の多職種連携も進む」と述べた。
一方、地域フォーミュラリに選定される医薬品に関しては印南氏が「実質的に後発品がメイン」と指摘するが、近年の供給不安問題の影響により選定のあり方が課題となっている。
地域の医薬品流通を担うアルフレッサの福神雄介氏は、「供給不足が生じにくい制度設計が必要だが、不足が起きた際の合理的な対処方法の一つが地域フォーミュラリだ。作成されれば、その地域における在庫が不足しないよう優先的に手を打てるので、促進する政策誘導があれば良い」とした。
後発品業界の構造問題に切り込んだ印南氏は、「一定の生産能力があり、コンプライアンスを遵守できる企業に生産を集約させるのが筋だ。企業をたくさん作るのではなく、有用な企業を育成し、コンプライアンスを守れずにすぐに売り逃げする企業は淘汰されても良い」と訴えた。