頬部に進展する口腔がん、下顎骨の外側に存在するbucco-mandibular spaceに着目
東京医科歯科大学は10月23日、口腔がんにおけるbucco-mandibular space浸潤症例の解析を行い、その浸潤形態を3つのパターン(パターンA:水平型、パターンB:垂直型、パターンC:拡張型)に分類し、パターンBおよびCは予後不良であることが判明したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科顎口腔腫瘍外科学分野の原田浩之教授、釘本琢磨助教、口腔顎顔面解剖学分野の岩永譲教授、口腔病理学分野の池田通教授、歯科放射線診断・治療学分野の三浦雅彦教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Oncology」にオンライン掲載されている。
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近年、口腔がんに対する各種治療法は進歩しており、生存率は向上してきた。一方で、頬部に進展する口腔がんは予後不良であることが報告されており、一因として手術後の局所再発率が高いためと考えられている。2017年に同研究グループの岩永譲教授が提唱したbucco-mandibular space(頬下顎隙)は下顎骨の外側に存在する間隙で、下顎歯肉がんや頬粘膜がんでは容易にこの間隙に進展することがわかっている。研究グループは、この間隙に進展する口腔がんの浸潤形態を分類し、さらに、その浸潤形態によって予後に差があるかどうかを検証した。
下顎区域/下顎半側切除した109人、頬下顎隙への浸潤形態を3パターンに分類
研究グループは、下顎区域切除もしくは下顎半側切除を行なった口腔がん109人を対象に解析を行った。その結果、頬下顎隙への浸潤形態は3パターンに分類された。そのパターンは、パターンA:水平型、パターンB:垂直型、パターンC:拡張型と定義した。
頬下顎隙の浸潤は術前MRIで高感度に評価可能、予後不良な浸潤パターンも判明
術前MRIによる頬下顎隙浸潤の評価においては、感度:100%、特異度:84.2%、陽性的中率:83.3%、陰性的中率:100%で正診率:91.2%だった。
頬下顎隙浸潤症例は、非浸潤症例に比べると、原発巣が進行した症例が多く、頸部リンパ節転移の頻度が高いことがわかった。また、病理組織学的切除断端が陽性もしくは近接する傾向にあった。さらに、浸潤パターン別に詳細に調べてみると、パターンBおよびパターンCに該当する症例で、垂直断端が陽性もしくは近接する傾向が顕著だった。また、パターンにかかわらず頬下顎隙進展が高度である症例は皮膚浸潤を来すため、頬下顎隙は皮膚浸潤への進展経路となり得る可能性がある。3年無病生存率では、非浸潤症例:86.7%、浸潤症例:66.0%だった。浸潤パターン別の3年無病生存率はパターンA:82.1%、パターンB:67.4%、パターンC:48.0%だった。
今回の研究では、109人という多数例の検討から、頬下顎隙浸潤の浸潤形態を分類することに成功した。これにより、予後不良な浸潤形態があるということが明らかになった。また、術前MRIで浸潤形態を判別でき、予後予測が可能になると考えられる。「予後不良な浸潤形態と判別された症例では、局所再発の可能性を考慮して治療計画を立案していくことが、治療成績の向上につながるものと考えられる」と、研究グループは述べている。
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