舌がん、頸部リンパ節転移の早期発見・治療が重要
広島大学は10月18日、舌がんの超音波画像の画像特徴量を抽出し、抽出した画像特徴量と機械学習を組み合わせたRadiomics解析により、頸部リンパ節転移の予測精度に関わる研究を行った結果を発表した。この研究は、同大病院歯科放射線科の小西勝講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「HEAD AND NECK-JOURNAL FOR THE SCIENCES AND SPECIALTIES OF THE HEAD AND NECK」に掲載されている。
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舌がんは、口腔がんの中で最も頻度の高い疾患だ。舌がんは頸部のリンパ節に転移を生じやすく、がんの中では早期に位置付けられているステージⅠ、Ⅱに該当する舌がんでも頸部リンパ節転移の生じる確率は、8.2~46.3%と報告されている。そのため、頸部リンパ節転移は患者の予後を決める重要な因子となっている。この頸部リンパ節転移の検出と治療が遅れると、リンパ節外への浸潤や複数のリンパ節転移が起こり、さらに予後を悪化させる可能性がある。また、リンパ節外浸潤や多発性にリンパ節転移のある患者は、手術後に放射線療法や化学療法などの追加治療を受けることが推奨されている。そのため、治療期間が延長し、放射線療法や化学療法の有害事象により患者の生活の質(QOL)が低下する恐れがある。
このような予後やQOLの悪化を防ぐためには、頸部リンパ節転移を早期に発見・治療することが重要となる。そこで今回の研究では、舌がんの超音波検査画像が持っている画像特徴量から頸部リンパ節転移を予測できないかと考えた。
超音波画像の特徴量を抽出、機械学習で転移の予測精度を検証
今回の研究では、舌がんの超音波画像の画像特徴量を抽出し、抽出した画像特徴量を機械学習によって頸部リンパ節転移の予測精度について調べた。
対象は、口腔内超音波検査を施行した舌がん患者120人。そのうち、30人は頸部のリンパ節に転移を生じた。舌がんの超音波画像において病変に該当する低エコー領域に加えて、周囲3mmの範囲を含めて画像特徴量の抽出領域に設定した。設定した範囲の画像特徴量を抽出し、機械学習モデルを用い、感度、特異度、精度、受信者動作特性曲線(receiver operating characteristic curve:ROC)を作成し、Area under the curve(AUC)を算出し、診断性能を求めた。
AUC=0.967など良好な予測精度、高確率での転移予測を示唆
研究の結果、最も良い機械学習モデルで、感度=0.900、特異度=0.967、精度=0.950、AUC=0.967であり、良好な予測精度が得られた。舌がんの超音波画像の特徴量解析と機械学習を組み合わせたRadiomics解析によって、頸部リンパ節転移を高い確率で予測できることが示唆された。
CT、MRI、PETなども組み合わせてさらに精度向上へ
今回の研究で示されたように舌がんの超音波画像から頸部リンパ節転移を予測できれば、あらかじめ頸部のリンパ節を手術で取り除くことで、舌がん患者の予後の改善が期待される。今後は、より高い精度で頸部リンパ節転移を予測できるように超音波画像だけでなく、CT、MRI、PETなどの他の画像も組み合わせて研究を進めていきたい、と研究グループは述べている。
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