小児薬は、新規収載時の小児加算に加え、薬価改定時にも小児に関する効能・効果、用法・用量が追加された場合に薬価上の評価を行っている。ただ、小児加算は5~20%の範囲で適用されているものの、大半の品目では5%の適用にとどまり、薬価改定時の小児適応に対する加算についても多くの品目が最も低い5%に該当し、高い加算率を算定することは稀となっている。
また、新薬創出等加算の品目要件の対象となっておらず、8月に提出された薬価算定組織の意見でも「有用性系加算に該当しないものであっても、小児に対する効能・効果、用法・用量の開発に関して、特に評価すべき品目については新薬創出等加算の対象としてはどうか」との提言が行われている。
小児薬開発に対する評価が高くない現状に対し、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「対象患者数や年齢数に応じた組み入れが必要になることや、同意取得など小児特有の配慮が必要になり、なかなか開発が進まない。小児の治療が安心・安全に行えるよう開発促進を評価するための配慮が必要」と訴えた。
収載時・改定時における加算については「実際に評価されている範囲が限られていることから、もう少し広い範囲で評価するよう見直していくべき」との見解を示した。
新薬創出等加算の品目要件に小児薬を加えることにも賛同し、「開発・治験の難しさ、採算等から小児の医薬品評価全般について、インセンティブが機能するよう見直しを検討する必要がある」と評価の拡充を求めた。
長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「新薬全般について、日本への早期導入した場合の評価や有用性加算の評価の見直しについては慎重な対応が必要」との考えを示した一方で、小児薬に対しては「薬事で検討が進められている開発促進策と歩調を合わせる必要性には賛同する」と述べた。
その上で、「欧州は小児の適応拡大に合わせた制度になっており、日本でも既承認薬の適応追加として一変承認が相当数あることが見込まれる。新薬創出等加算とは別に、小児用のルールとして現行の加算と共に全体的に考えるのが望ましい」との考えを示した。
石牟禮武志専門委員(塩野義製薬渉外部長)も、「成人とは異なる開発の難しさやコストがかかるため、企業にとって特許期間中の新薬から得られる収益を、次の開発へ投資するサイクルを早く回さなければならず、小児薬への開発優先度が低くなる」と現状を指摘。
「薬事制度で小児薬の開発効率化の検討が進められているが、薬価についても評価の拡充で後押ししていただけると企業の意思決定につながる」と要望した。
一方、松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「小児薬は特に開発を促進していく分野になる。小児加算5%の加算率が小さいから要件を見直すのは理解に苦しむが、評価の視点が欠けているのであれば新たな考え方を議論する余地はある。薬事制度と連動した評価にすることも十分に考えられる」と理解を示した。