医療団体が脳死判定に関するガイドラインを公表
米国神経学会(AAN)、米国小児科学会(AAP)、小児神経学会(CNS)、および集中治療医学会(SCCM)の4医療団体が共同で作成した脳死判定に関する新たなコンセンサスガイドラインが、「Neurology」に10月11日公表された。このガイドラインは、成人の脳死判定に関するAANの2010年のガイドラインと、小児の脳死判定に関するAAP、CNS、およびSCCMの2011年のガイドラインを改定し、一つのガイドラインとしてまとめたものである。本ガイドラインの共著者である、米フィラデルフィア小児病院のMatthew Kirschen氏は、「このガイドラインは、患者が脳死判定基準を満たすかどうかを判断するための、包括的かつ実践的な評価方法を医師に提供するものだ」とAANのニュースリリースで述べている。
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脳死とは、脳に致命的な損傷が生じた後、その機能が完全かつ永久に停止した状態を指す。ガイドラインの筆頭著者である、米ボストン大学のDavid Greer氏は、「脳死とは、臨床医が患者の脳機能のいかなる臨床的兆候も観察したり引き出したりすることができない状態のことをいう。脳死状態の患者では、昏睡状態や植物状態の患者とは異なり、回復は望めない。脳死は、法的には死亡と見なされている」と説明する。
新たなガイドラインには、脳と脳幹が臨床的に機能しているかどうかを評価するための標準化された手順が概説されている。この手順の一環として、臨床医は、自力での呼吸を含め、脳と脳幹が臨床的に機能しているかどうかを判断するための評価を行う。脳死の判定は、患者が致命的な脳損傷を負い、脳機能を回復する可能性がなく、完全に無反応で、脳または脳幹の機能が示されず、自力で呼吸できない場合に下される。ガイドラインには、脳死判定の前提条件、検査と検査者、無呼吸検査や補助検査に関する情報も記されている。さらに、AANのウェブサイトには、脳死判定に至るプロセスを支援するために開発された対話型ツールも公開されている。
ガイドラインの共著者である米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン医療センターのAriane Lewis氏は、「脳死判定の基準は、米国内でも病院により異なり、また世界的に見ても国や地域により異なっているのが現状だ。それゆえ、脳死判定のための標準化されたアプローチが必要とされている」と指摘。その上で、病院管理者に対し、自院の脳死判定のガイドラインがこの新しいガイドラインと一致するように更新されているかどうかを必ず確認するべきだと勧告している。
ガイドラインの共著者である、米スタンフォード大学神経学臨床教授のSonia Partap氏は、「AAPは、多大な時間を費やして、エビデンスに基づき、慎重に検討を重ねて作成されたこのコンセンサスガイドラインを高く評価している」と話す。同氏は、「子どもの死はいつだって悲惨だ。小児科医は患者と特別な信頼関係を築いており、このガイドラインは、極めて困難な状況に立たされた家族に医師がサポートとアドバイスを提供するのに役立つだろう」と述べている。
▼外部リンク
・Pediatric and Adult Brain Death/Death by Neurologic Criteria Consensus Guideline
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