今回の事案は、厚労省の公益通報窓口に同社の不正内容が通報されたことで発覚した。厚労省が8月29日、同30日、9月4日の計3回立入検査を行ったところ、症例報告書に治験薬の投与時間や採血時間が本来実施された時間とは異なる時間が記入されていたほか、血圧の値にもデータ改ざんが確認された。
被験者の登録時にも、呼吸器機能検査を不適切に実施し、治験実施計画書に規定された適格性基準から除外すべき症例を組み入れていた。
また、医師と施設スタッフ、治験コーディネーター(CRC)が電子化された症例報告書などのIDパスワードを共有し、医師のみしか閲覧が認められていない治験データを共有していた。治験責任医師、治験分担医師にはe-ラーニングの受講が参加要件となっていたが、CRCが医師になりすまして代理受講を行っていたことも判明した。
治験薬の保管管理についても、予め決められた温度帯から逸脱する不備があったにも関わらず、逸脱状況を記録せずに隠蔽していた実態が確認された。
同社は、設立された12年から10年以上にわたって不正を行っており、医薬品116試験、医療機器7試験の計123試験でGCP違反が確認された。同社が不正していた試験に関係していた開発品目のうち、医薬品23品目と医療機器2品目が承認されている。これらの品目について、製造販売企業が治験データを精査したところ、有効性・安全性に影響がないことが確認されているという。
厚労省は、実施中の試験について、被験者保護を最優先に適切な対応を実施するよう同社と治験依頼者に指示した。
同社は、東京と大阪にオフィスを保有し、主に呼吸器科や精神科、皮膚科、生活習慣病の治験を受託してきた。厚労省による立入検査後に、GCP違反に関する調査チームを立ち上げている。
今回のGCP違反に対して同社は、本紙に「このような事態となり、関係各所に多大な迷惑と心配をかけたこと、SMOの責務を全うできなかったことを深くお詫びしたい」とコメント。一方で、不正の認識については「調査中のためお答えできない」と回答した。