■診察前の処方提案有効
中央社会保険医療協議会は18日に総会を開き、薬剤師など多職種が協働して外来の癌化学療法を実施した場合に算定できる「外来腫瘍化学療法診療料」について議論。医師の診察前に病院薬剤師が癌患者の服薬状況等の情報収集・提供を行うことで医師の大幅な負担軽減につながっているとして、評価することへの賛同意見が委員から相次いだ。病院薬剤師から要望の強かった、いわゆる“薬剤師外来”が次期改定で評価される方向になりそうだ。
2022年度診療報酬改定では、医師や薬剤師、看護師の多職種が連携して抗癌剤を投与した後の副作用管理を進めるため、外来で癌患者に行う化学療法などを行った場合に算定できる「外来腫瘍化学療法診療料」が新設された。
同加算の算定要件で薬剤師に関する部分では、患者の投薬歴や副作用歴、服薬状況等を医師に報告し、必要に応じて副作用に対応する薬剤、抗癌剤等の処方に関する提案を行うことを求めているものの、診察後に薬剤師が処方提案して処方修正が必要となった場合は再処方が必要となり、抗癌剤が減量または中止となった場合には調製した薬剤が廃棄となった事例も見られていた。
厚生労働省の調査結果では、同診療料1を届け出ている医療機関401施設のうち、57%が診察前に薬剤師が情報収集と医師への情報提供を行っている実態が判明した。
診察前に面談による薬剤師外来を実施し、患者情報の提供や処方提案を行うことで、医師が処方修正などの追加業務に追われる必要がなくなったり、当日の処方や指示にすぐ反映できるなどのメリットが期待されている。
さらに、日本臨床腫瘍薬学会の調査結果では、診察前に薬剤師が関与して得た患者情報や治療の提案について、がん診療連携拠点病院等の医師の92%が「診察する上で有用な情報」と高く評価。「薬物治療の効果や安全性の向上につながっている」78%、「外来診察時間の短縮につながっている」67%といずれも高い評価を得ていた。
こうした薬剤師外来の取り組みについて、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「癌薬物療法の有効性と安全性の確保を通じた医療の質向上に貢献すると共に、タスクシフト・シェアを通じた医師の働き方改革にも貢献する。現場でこのような取り組みがより進むよう評価すべき」と求めた。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も「患者にとって大変有益で、医療の質向上、医療の効率化につながるのであれば推進する方向で検討する余地はある」と賛同。
患者代表の高町晃司委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)も「副作用が減少する側面があり、癌だけでなく複合的な疾患を抱えているケースの対応についても情報連携が進む」との見方を示し、診療報酬上の評価を求める意見が相次いだ。