二次感染予防のため、新型コロナ感染者へのリハビリ介入は遅れがちだった
大阪公立大学は10月17日、ICUで挿管呼吸管理下の重症新型コロナウイルス感染症患者に対する早期リハビリテーションを実施し、機械学習を用いた因子評価によりその効果の有用性を実証したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科 整形外科学の池渕充彦講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Progress in Rehabilitation Medicine」にオンライン掲載されている。
リハビリテーションスタッフは患者に接触する機会が多く、感染症の罹患リスクが他の医療職より高くなる。新型コロナウイルス感染症においても例外ではなく、新型コロナウイルス感染症患者へのリハビリテーションは、快方に向かってから行われることがほとんどだった。その結果、十分な体力をつけて退院できる患者は少なく、特に挿管呼吸管理を行うような重症患者への早期リハビリテーション介入が求められていた。
新型コロナ重症患者に早期リハビリ介入、非介入群と日常生活活動性の指標・死亡率を比較
研究グループは今回、新型コロナ第4波の2021年4~6月に大阪公立大学(当時大阪市立大学)医学部附属病院に、新型コロナウイルス感染症の重症患者として入院した57人のうち34人に、覚醒度に合わせた呼吸練習、座り練習、関節可動域練習、筋力強化練習、立位練習、歩行練習などの早期リハビリテーションを行い、リハビリテーション介入群と非介入群との間で、日常生活活動性の指標(座位・立位・歩行・IMS)や死亡率を比較した。
早期リハビリ介入で活動性指標に有意な結果、二次感染や医療事故も起こらず
その結果、死亡率には差がなかったが、リハビリテーション介入群は非介入群に比べ、座位達成数、立位達成数、歩行達成数、IMSのいずれの活動性指標においても有意な結果を示し、日常生活活動性が早くスムーズに回復する可能性が示唆された。また、恐れていたリハビリテーションスタッフへの接触感染や防護服破損、患者の急変・人工呼吸器閉鎖回路の破綻などの医療事故も起こらなかったという。
これらの結果から、事前学習や個人防護服着用などのマニュアル順守で、重症新型コロナウイルス感染症患者に対する早期リハビリテーション介入が安全に実施できることが明らかになった。
リハビリ介入による感染予防ため事前学習・指導、マニュアル整備が必要
早期リハビリテーション介入の効果は多くの先行研究で報告されているが、同時に接触感染や患者急変など、さまざまな事故の可能性などが指摘されている。「事前学習やマニュアルなどの整備や十分な指導と教育を行うことで、今後の未知なる感染症においても応用が期待される」と、研究グループは述べている。
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・大阪公立大学 プレスリリース