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心不全の再入院や予後、NO吸入負荷試験から予測可能と判明-東北大

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2023年10月18日 AM10:21

肺高血圧症の肺血管機能を評価するNO吸入負荷試験、心不全に対する評価は不十分

東北大学は10月16日、心不全に対する一酸化窒素吸入負荷試験(NO吸入負荷試験)の有用性に着目し、同大学病院でカテーテル検査を受けた肺高血圧分類2群(Group2 PH)心不全症例のデータを後ろ向きに解析した結果、NO負荷試験で心臓の負担を示す肺動脈楔入圧の上昇がみられた症例では、心不全再入院率が高く予後が悪いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科循環器内科学分野の安田聡教授、矢尾板信裕院内講師、佐藤大樹助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「ESC heart failure」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

心不全は心臓から血液を送る力が低下し、息切れや体の浮腫(むくみ)がみられ、生命に関わる世界的にも主要な疾患で、特に肺動脈の拡張障害を伴うGroup2 PH心不全は検査法や治療法が未確立で予後も不良である。一方、NO吸入負荷試験は、主に肺高血圧症の肺血管機能を評価する検査法で、カテーテル検査中に一酸化窒素を吸入し、その際の心臓・肺血管の圧力変化から肺血管治療反応性を予測することに用いられている。

近年、肺高血圧症だけでなく心不全治療においてもsGC刺激薬が導入され、肺血管機能やNOシグナルへの関心が高まっている。しかし、心不全患者に対するNO吸入負荷試験の重要性を評価した研究は十分ではなかった。NO吸入負荷試験では、NO吸入による肺動脈の拡張後、右心室から左心室に血流が移動することで左心室に負担がかかる。したがって、肺動脈楔入圧の上昇がみられる患者は、心予備能が低下している可能性がある。

NO吸入後の肺動脈楔入圧上昇、死亡・再入院の発生や心不全状態の改善率不良と関連

研究グループは、Group 2PH心不全患者におけるNO吸入負荷試験の反応性と心予備能・予後との関連に焦点を当て、解析を行った。

2011年から2015年にNO吸入負荷試験を施行した69例のGroup2 PH心不全患者における検査後1年以内の全死亡と心不全入院の複合エンドポイントを評価した。同時期のガイドラインに準じ、Group2 PH心不全の診断基準は肺動脈楔入圧15mmHg、平均肺動脈圧20mmHg以上とした。その結果、34例でNO吸入後に肺動脈楔入圧の上昇がみられた(変化率:3.26±2.22mmHg)。肺動脈楔入圧非上昇群と比較し、上昇群では複合エンドポイントの発生が高く(p=0.0019)、肺動脈楔入圧の上昇率に応じて1年後のBNP(心不全の状態を評価する指標)の改善率が不良だった(R2=0.3474、p<0.001)。

NO吸入負荷試験を用いた心予備能と予後評価法への応用に期待

現在、多くの心不全治療薬や治療戦略が報告されているが、治療反応性や心予備能を予測する方法はまだ確立していない。「今後、本研究のようにNO吸入負荷試験を用いた心予備能と予後の評価方法が応用されることが期待される」と、研究グループは述べている。

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