医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 圧迫性頸髄症の手術/術後合併症、最近10年間の1,000例以上を調査-群大ほか

圧迫性頸髄症の手術/術後合併症、最近10年間の1,000例以上を調査-群大ほか

読了時間:約 1分41秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2023年10月18日 AM10:33

頸椎椎弓形成術の手術成績は?北関東9施設の症例調査

群馬大学は10月17日、圧迫性頸髄症に対する手術治療と手術後合併症について、大学病院など北関東の9つの医療機関から最近10年間の1,000例を超えるデータを収集・調査し、その結果を発表した。この研究は、群馬大学医学部附属病院整形外科の高澤英嗣病院講師、同大大学院医学系研究科整形外科学の筑田博隆教授らの北関東脊椎グループによるもの。研究成果は、国際医学雑誌「European Spine Journal」に掲載されている。

圧迫性頸髄症は健康寿命を脅かす代表的な脊椎脊髄疾患である。圧迫性頸髄症に対する手術法として日本で開発された「」がある。手術成績の向上を目的に、これまで同手術法の改良が行われてきた。その一方で、超高齢化など、患者を取り巻く環境は日々変化している。しかし、近年の手術技術の進歩や患者背景の変化と術後合併症の発生との関係について十分に調査されていなかった。

北関東脊椎グループ9施設(、獨協医科大学、、伊勢崎市民病院、)は、最近10年間の手術技術の進歩と術後30日以内に起こったすべての合併症に焦点を当て、1,095例という数多くのデータの集積・調査を行った。

手術成績は良好、術後の上肢麻痺は減少したが感染症は増加

その結果、頸椎椎弓形成術の技術向上とその安全性の高さは、年齢に関わらず、高齢者にとっても有効な治療法であることを示した。最近10年で患者の高齢化は進んだものの、手術成績は良好だった。また、術後30日合併症の発生率は上昇することなく安定していた。ただし、術後30日合併症の具体的な内訳は変化しており、これまで代表的な合併症のひとつであった術後の上肢麻痺(C5麻痺)は減少し、術後の感染症(手術創部の感染[化膿]、肺炎、尿路感染症)は増加していた。

感染症に関連した合併症対策が重要、診療指針の更新に期待

研究結果は、頸椎椎弓形成術の有効性と安全性に関する最新の知見を示している。手術技術の進歩と安全性の向上は、高齢患者にとって治療法の選択肢を広げ、人生100年時代における健康寿命の延伸に寄与すると考えられる。一方で、高齢患者の術後ケア(周術期管理)と早期回復の観点から、感染症に関連した合併症(手術創部の感染、肺炎、尿路感染症)への対策は重要だ。「これに関するさらなる研究と適切な患者ケアの確立が今後の課題。研究結果を含めた診療指針(ガイドライン)が更新されることで、医療者だけでなく、治療を受ける患者へ有用な医療情報を提供することが期待される」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなる可能性-神戸大ほか
  • 腎臓の過剰ろ過、加齢を考慮して判断する新たな数式を定義-大阪公立大
  • 超希少難治性疾患のHGPS、核膜修復の遅延をロナファルニブが改善-科学大ほか
  • 運動後の起立性低血圧、水分摂取で軽減の可能性-杏林大
  • ALS、オリゴデンドロサイト異常がマウスの運動障害を惹起-名大