診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、レケンビの薬価算定方法について「通常の算定ルールで対応可能であり、別のルールは必要ない。投与対象患者数も現状の見込みで考え、市場拡大した場合に収載後のルールを作るべき」と語った。
介護費用データの取り扱いについては、「薬価収載までに90日と限られているのに、介護費用データを収載時に取り入れるのは限界がある。介護費用の取り扱いは費用対効果評価専門部会の検討事項であり、費用対効果評価で議論すべき」と語った。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、介護費用の取り扱いについて、「医療保険の財政を使うのが妥当なのか考えると、慎重にすべき。薬価算定では既存の評価軸で評価し、(介護費用の分析結果が)費用対効果評価に活用できるか研究すべき」との考えを示した。
■「まずは研究から」‐費用対評価部会
同日に開催された費用対効果評価専門部会でも、レカネマブの費用対効果評価で、介護費用の軽減にかかるデータの取り扱いを議論した。池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長)は、「レカネマブは、介護費用データを費用対効果評価を反映できる試金石になる。日本は介護データベースがあるので、長期に費用対効果を追いかけて介護における費用対効果評価ができるか実験的に取り組んでもらいたい」と期待感を示した。
これに対し、他の委員からは、費用対効果評価への導入に慎重な意見が相次いだ。江澤和彦委員(日本医師会常任理事)は、「薬剤の効果を今後研究していくと思うが、現時点では難しいとの印象を持っている。認知症は人との関わりや環境要因などの因子が影響する。MCI(軽度認知障害)患者はあまり介護サービスを利用していないのが実態で、幅広い視野での検討が必要」と述べた。
患者代表の高町晃司委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)も、「レカネマブの丁寧な議論を行うためには、まず研究から始めることでスタートするのが良いのではないか」と主張した。
レカネマブの薬価収載に向けては、効率的に議論するため、次回は両部会の合同部会として開催する。