社会保障審議会医療保険部会が9月29日に開かれ、薬剤自己負担の見直しに関する議論を開始した。厚生労働省は、長期収載品の自己負担のあり方、薬剤の種類に応じた自己負担の設定など四つの論点を提示。委員からは、医療経済効果などの観点から長期収載品の自己負担見直しに賛成意見が出た一方、医師委員などからは「必要な医療提供の観点から慎重な検討が必要」との声が上がった。
現行制度における患者の薬剤自己負担割合は、原則70歳未満が3割、70~74歳が2割、75歳以上が1割となっているが、政府は限られた医療保険財政下でも創薬力強化を図り、製薬企業のイノベーションを適切に評価するため、長期収載品の自己負担のあり方を見直す方針を示している。
自己負担見直しについては、これまでも同部会で議論してきたが、この日の会合で厚労省は論点として、▽長期収載品の自己負担▽市販品類似薬の保険給付のあり方▽薬剤の種類に応じた自己負担の設定▽薬剤定額一部負担――を示した。
長期収載品の自己負担では、使用実態に応じた評価を行う観点や、後発品との薬価差分を踏まえ自己負担のあり方を見直すとした一方、医療上の必要性に応じ適切な医薬品を選べるよう担保する必要があること、同一薬効成分に一律の固定償還額(参照価格)を設け、償還額を超える分は患者が負担する参照価格制との関係を課題に挙げた。
猪口雄二委員(日本医師会副会長)は「いずれも患者の自己負担増に変わりない。やみくもに負担増を求めるのではなく、医療上必要なものは保険適用する公的医療保険制度の原則を守り、長期収載品の後発品への置き換えが金額ベースでも進むためには、後発品の安定供給問題を最優先に解決すべき」と訴えた。
渡邊大記委員(日本薬剤師会副会長)も「医療現場に混乱が生じない制度設計、丁寧な議論が必要」と強調。村上陽子委員(日本労働組合総連合会副事務局長)も「いずれも医療アクセスの観点から問題がある」と主張した。