半月板逸脱を増悪させる詳細な原因は不明
広島大学は10月3日、変形性膝関節症の進行と痛みに関与する内側半月板を逸脱させる個別の力学的特徴を発見したと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科生体運動・動作解析学の石井陽介助教、同大大学院医系科学研究科整形外科学、香川大学医学部整形外科、コニカミノルタ株式会社の研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」オンライン版に掲載されている。
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半月板は、関節内に正しく位置することで衝撃を吸収する働きがある。しかし、半月板が関節外方向へ逸脱していくと、衝撃吸収する働きが低下し、変形性膝関節症の進行スピードが加速していく。そのため、人生100年時代においては、早期段階から原因を特定し、個別に適切な治療・予防につなげることが健康寿命の延伸にとって重要だ。変形性膝関節症患者の半月板逸脱は、歩行中の関節負荷によって増悪することが確認されている。特に、ヒトの歩く癖から関節に生じる負荷はそれぞれ異なり、その複雑さから詳細な半月板逸脱を増悪させる原因は不明だった。一方、オーダーメイドの予防・治療の確立には、この詳細な原因解明が強く望まれている。
歩く癖で生じる力が変形性膝関節症の半月板逸脱と関連
今回の研究では、健常者の半月板の動き方と比較し、変形性膝関節症患者を3パターンに分類した。また、足底の地面接地や踏み込み時に発生する膝の内側に生じる力、膝を曲げる力が、変形性膝関節症患者の半月板逸脱と関連し、歩行中に半月板の逸脱を増悪させていることを突き止めた。
逸脱の引き金「半月板後方付着部損傷」、変形性膝関節症患者で発生率高
半月板の後方付着部損傷は、逸脱の引き金になることが知られている。その発生率を調査すると、健常者の動きと異なる変形性膝関節症患者で高いことが確認された。
変形性膝関節症の新規治療確立に期待
半月板の動き方から、早期段階の逸脱を予測し、将来の変形性膝関節症の発症を抑制させることが期待される。また、歩行中の半月板逸脱を増悪させる力を解明したことで、その力を効率的に減少させる装具や歩き方など、歩く癖の修正を通して変形性膝関節症患者の新規治療の確立が期待される。特に、これらの治療方法は、変形性膝関節症患者の半月板の動き方ごとにオーダーメイド化が可能となるという。加えて、現在膝に痛みなどの症状がない者にとっても、半月板が逸脱しない適切な歩き方や歩行量など日常生活中に実践できる、具体的な予防方法を提案できる可能性がある、と研究グループは述べている。
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・広島大学 プレスリリース