放射線療法/抗がん剤+化学療法の治療効果、早期予測できる手法が必要
岐阜大学は9月21日、臨床で汎用されているMRI磁場1.5Tでの重水素MRI法を開発し、膵がん移植マウスモデルにおいて、放射線治療や、抗がん剤治療効果を早期に検出できることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大高等研究院/One Medicine創薬シーズ開発・育成研究教育拠点(COMIT)先端医療機器開発部門の兵藤文紀准教授(JST創発研究者水島パネル)、同大医学系研究科放射線医学分野の松尾政之教授、Abdelazim Elhelaly博士研究員、同大応用生物科学部共同獣医学科の森崇教授、岩崎遼太助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Cancer Research」に掲載されている。
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放射線療法や抗がん剤を用いた化学療法後の治療効果は、主にCTやMRIなどの画像診断技術が用いられている。CTやMRIによる形態学的評価は、がんなどの疾患を正確に診断し治療効果を確認するために必要不可欠な診断法だ。しかし、がんの大きさは治療後数週間から数か月間変化しないことがあるため、治療効果の判別には時間がかかるという問題がある。また、治療効果が得られない場合には、時間的な損失が大きいためがん治療の効果を早期に予測する方法が求められている。
従来の重水素MRI研究は、ヒトへの応用困難な超高磁場
重水素は、核スピン(陽子と中性子を各1つ保有)を持つために、MRIで信号を得ることができる。重水素MRI法は、重水素化したさまざまな分子も可視化できる可能性があり、MRIを用いた機能・代謝イメージングへの展開も期待される。これまでの研究では、ヒトへの応用が困難な超高磁場MRI(7Tなど)を用いた重水素MRIによる研究が報告されていた。臨床で用いられているMRIの磁場(1.5T)で重水素MRI法が開発された場合、迅速な医療応用が期待される。
1.5Tの重水素MRI法を開発、膵がんマウス等で治療効果確認含め有用性確認
今回の研究では、現在臨床で汎用されている1.5Tの磁場強度を持つ重水素MRI法を開発した。まず、1.5Tの磁場に適合する検出器(9.8MHz)を用いて、重水と水を含む疑似試料を重水素イメージングにより解析し同技術の精度を評価した。膵がん移植モデルマウスを作製し、重水を30%含む水を自由飲水にてマウスに与え、経日的に重水素イメージングを実施。その結果、マウスの重水素のMRI信号は経日的に増強し、特にがん組織では顕著に蓄積することがわかった。
次に、放射線治療もしくは、抗がん剤治療(ゲミスタビン、アバスチン)などを行い、1日目、3日目および7日目に重水素イメージングおよび通常のプロトン(1H)イメージング(解剖学的情報)を取得。その結果、MRIで描写されるがんの大きさは、治療10日後においても変化はなかったが、重水素イメージングでの重水の蓄積(正常肝組織のミトコンドリア機能エネルギー代謝には影響なし)は、いずれの治療においても治療1日後、3日後に明確に変化することを発見した。
早期がん治療効果判別への臨床展開などに期待
今回の研究では、臨床適合するMRI磁場での重水素イメージングにより、種々のがん治療において、重水のMRI画像強度をイメージングバイオマーカーとする方法を示すことができた。今回の研究の成果は、がん治療の早期治療効果の判別への臨床展開に加え、さまざまな重水素含有分子を用いた機能・代謝イメージングへの応用など、広範な応用が期待される。
同研究成果は、がん治療の早期治療効果の判別への臨床展開に加え、さまざまな重水素含有分子を用いた機能・代謝イメージングへの応用など、広範な応用が期待される、と研究グループは述べている。
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