日薬は、保険医療機関による同一敷地内への薬局の誘致が増えているとの情報が寄せられたことから、都道府県薬の協力を得て、全国の敷地内薬局に関する情報を収集した。
診療所での敷地内薬局誘致事例は、10都道府県31件から13都道府県64件となった。私立や民間のその他病院も26都道府県94件から34都道府県146件と大きく伸びている。
一方、国公立病院は36都道府県81件から39都道府県98件、公的病院が25都道府県44件から26都道府県53件、社会保険病院が5都道府県6件から8都道府県10件となった。
21年5月調査時点からは2倍の件数に膨れ上がっている。森昌平副会長は、「率直に言ってまた出すのか、こんなに増えたのかという思いだ」と述べた。
日薬として敷地内薬局に反対する姿勢は変わらず、KKR札幌医療センターの敷地内薬局の整備事業に関する問題に関しては、北海道警の捜査を注視していくと共に、2024年4月の診療報酬改定で敷地内薬局に対する適正な措置を求めていく考えだ。
■政策提言で改訂版公表
また、この日の会長協議会では、「日本薬剤師会政策提言2022」の改訂版を公表した。提言内容は、▽地域医薬品提供計画(仮称)の策定▽医薬品の研究開発の促進、製造・流通・安全確保体制の整備▽医療用一般用医薬品(仮称)類型の創設▽医療DXにおける薬局業務の高度化推進▽薬事衛生に関わる社会活動を通じた薬剤師の役割――など7項目。薬事衛生に関わる社会活動を通じた薬剤師の役割を新たな項目に加えたが、2022年の政策提言から大きく変えていない。
医療用一般用共用医薬品は、地域住民が医薬品をより活用しやすくするため、医師と薬剤師の両者で対応することができる一般用医薬品(OTC医薬品)の新たな類型として提案していく。医師による処方箋の交付または薬局での販売のいずれも可能とし、医療用医薬品を処方箋なしで販売する、「零売」とは異なる新たな仕組みとなる。
零売については、既に厚生労働省の「医薬品の販売制度に関する検討会」で現在の通知による規制ではなく、法令上位置づける方向で検討が進められている。
共用医薬品の実現可能性について、東京都薬剤師会の高橋正夫会長は「厚労省の議論で零売の考え方が整理されてしまうと、その後に日薬の政策提言を出しても通らないこともある。現在の議論の中でどこかで出しておいた方がいいのではないか」と質した。
これに対し、森氏は「(共用医薬品について)議論の余地を残さないといけない。保険との話も含め幅を広げて議論しないといけない」と述べた。