酒を飲むと相手が魅力的に見える「ビール・ゴーグル効果」認められず
酒の席で会った誰かと一夜限りの関係を持ってしまったことを、酒を飲むと相手が実際よりも魅力的に見える「ビール・ゴーグル効果」のせいにする人は多い。しかし実際には、アルコールにそのような効果はないようだ。飲酒によりもたらされるのは、すでに魅力を感じていた人にアプローチする勇気、いわゆる「liquid courage(酒の力を借りて出る勇気)」であることが、米スタンフォード予防研究センターのMolly Bowdring氏と米ピッツバーグ大学心理学分野のMichael Sayette氏の研究で示された。この研究結果は、「Journal of Studies on Alcohol and Drugs」に8月29日掲載された。
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一般的には、酒を飲むと周囲の人がより魅力的に見えると考えられている。しかし、そのような現象を体系的に検討した研究は実施されていない。Sayette氏は、「広く知られているアルコールの『ビール・ゴーグル効果』に関する文献はあるが、その内容はそれほど一貫していない」と説明する。
先行研究の多くで実施されたのは、研究参加者に、飲酒した状態と飲酒していない状態で誰かの写真を見せ、その人の魅力度を評価してもらうという実験だった。一方、今回Bowdring氏らが実施した研究では、この手法に、魅力を感じた相手に実際に会える可能性を示すという、より現実的な要素を付け加えた。具体的には、男性とその同性の友人18組(計36人、21〜27歳)に2回にわたり、アルコール飲料(1回目の実験)と非アルコール飲料(2回目の実験)を摂取してもらいながら、写真や動画の中の人物の魅力度を評価してもらった。友人関係にある2人組に参加してもらったのは、飲酒を交えた社交的な状況を模倣するのが目的だった。参加者は、その後の実験で魅力度の評価対象となった人と交流する機会が持てる可能性があるとの説明を受けた。また、魅力度を評価してもらった後には、最も会ってみたい人を4人選んでもらった。
その結果、参加者の魅力度の評価に対する飲酒の影響は確認されず、つまり「ビール・ゴーグル効果」を裏付けるエビデンスは認められないことが示された。しかし、参加者は、飲酒していないときに比べて、飲酒しているときには、その後の実験で会えるかもしれない4人を、魅力度を高く評価した上位4人から選ぶ傾向が強く、そのオッズは飲酒していない場合の1.71倍だった。
このことから、アルコールは他者に対する感じ方を変化させるのではなく、他者との交流への自信を高めるのではないかと研究グループは結論付けている。Bowdring氏は、「飲酒をする人は、飲酒によって社会的なモチベーションや意図が、短期的には好ましい方向に向かうが、長期的には有害な方向に変化する可能性があることを認識しておくと有益かもしれない」との見解を示している。
▼外部リンク
・Beer Goggles or Liquid Courage? Alcohol, Attractiveness Perceptions, and Partner Selection Among Men
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