VDR遺伝子変異により引き起こされるビタミンD依存性くる病/骨軟化症、禿頭のメカニズムは未解明
徳島大学は9月7日、ビタミンD受容体(VDR)が細胞死を介した毛周期の進行に不可欠な制御因子であることを発見したと発表した。この研究は、同大先端酵素学研究所の沢津橋俊准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Life Science Alliance」にオンライン掲載されている。
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活性型ビタミンDをリガンドとしたVDRは、骨や小腸でのカルシウム・リン代謝を担うことがよくわかっている。一方で皮膚、特に毛髪の恒常性においては、活性型ビタミンDは関与せず、リガンドに依存しないVDRの働きの重要性が示唆されている。VDRは、毛包の恒常性維持に必須であり、その機能欠失は脱毛を引き起こすことが知られているが、そのメカニズムはいまだわかっていない。またVDR遺伝子の不活性型変異によって引き起こされるビタミンD依存性くる病/骨軟化症では、骨変形とともに禿頭が認められ、その治療法はいまだ存在していない。
VDR遺伝子欠損マウスの毛周期、退行期に毛包下部の細胞が消失せず異常に残存し停止
研究グループは、VDR遺伝子欠損マウスでは、脱毛に先立って毛周期の「退行期」が進行途中で停止することを見出した。また、このVDR遺伝子欠損マウスの毛包では、通常退行期に細胞死によって消失していく上皮細胞が「surviving epithelial strand」として残存していることを突き止めた。シングルセルRNA-seq解析による遺伝子発現のパターンから、このsurviving epithelial strandは毛包下部の細胞種で構成されることを示すことが判明した。これらの結果から、毛周期つまりは毛包の再生過程においてこれまで重要視されていなかった退行期の進行異常が、後の脱毛につながること、またVDRが毛包再生の制御因子であることが明らかとなった。
一時停止した毛包、早期の抜毛刺激により再形成可能
興味深いことに、退行期で一時停止した毛包は、未処理条件では毛包としてのアイデンティティを喪失し、毛包形成不全・脱毛へと至るが、早期の抜毛刺激を加えることによって、毛包は再形成できることが見出された。この結果から、「一時停止した退行期」の毛包であっても毛包幹細胞は毛包形成のポテンシャルは喪失しておらず、外部からシグナルを与えることで毛包幹細胞を再活性化できることが示され、将来的な治療の可能性を示唆していると考えられた。
ビタミンD依存性くる病/骨軟化症の治療法確立につながる可能性
「将来的には、カルシウム・リン代謝を担うビタミンD依存的な機能と、毛髪の恒常性を担うビタミンD非依存的な機能、VDRがこの2つの機能を各々の細胞種で使い分ける仕組みの解明に取り組むことで、指定難病であるビタミンD依存性くる病/骨軟化症の治療法確立につながることが期待される」と、研究グループは述べている。
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