国内患者数22万人、現在も増加の一途をたどる潰瘍性大腸炎
群馬大学は9月8日、炎症性腸疾患に対し、アミノ酸を原料とした吸収性局所止血材による新規治療を世界で初めて実施したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科 消化器・肝臓内科学の浦岡俊夫教授と橋本悠医学博士らの研究グループによるもの。
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潰瘍性大腸炎は、日本国内で難病に指定されている大腸に発生する難治性炎症性疾患だ。国内の患者数は推定22万人で年々増加の一途をたどっている。主な症状は下痢や血便でQOLを大きく低下させる。
若年者にも多く発症する疾患であり、多くの患者は生涯にわたって薬剤治療の継続が必要となる。基本的な治療法は薬の内服や注射だが、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す。
全世界で使用されているアミノ酸由来止血材「ピュアスタット」を応用した治療法
今回、同大の浦岡教授が考案した新規治療法は、すでに消化器内視鏡治療中の出血を止めるために使用されている吸収性局所止血材(製品名:ピュアスタット)を応用した治療法だ。
ピュアスタットは生体内に存在するアミノ酸を原料とした止血材で、浦岡教授と株式会社スリー・ディー・マトリックスが開発を進め、日本では厚生労働省の薬事承認を取得し、2021年12月より保険償還品として同社が販売している。欧米をはじめ、全世界で累計約8万本が使用されている。
特定臨床試験開始、安全性の高い止血と局所での組織修復作用に期待
ピュアスタットは、臓器を構成する細胞が成長するために必要な細胞外マトリックスに類似した構造をしており、がん切除後の障害を受けた組織に塗布することで、障害部位の治癒を促進する効果が臨床研究より示唆されている。炎症性腸疾患の動物モデルにおいても有効性が示唆されたことから、今回特定臨床研究として有効性と安全性を検証するに至った。
すでに第1例目の投与が開始されており、第2例目も予定されている。研究グループは「潰瘍性大腸炎の治療では複数の薬が組み合わせて使用されているが、局所での組織修復を促進させる薬はないため、本治療法で有効性と安全性が確認されれば、潰瘍性大腸炎の患者にとっては大きな福音となる」と、述べている。
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・群馬大学大学院医学系研究科 プレスリリース