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入院中の転倒リスク予測、従来法に「SPPBを用いた下肢機能評価」追加が有用-名大

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2023年09月07日 AM10:49

高齢者の転倒リスク等の予測が可能とされる「」、入院患者でも予測できるのか?

名古屋大学は9月5日、入院患者の身体機能と院内転倒発生との関係を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部附属病院患者安全推進部の長尾能雅教授、先端医療開発部データセンターの今泉貴広特任助教(責任著者)、地域連携・患者相談センターの鈴木裕介病院准教授、リハビリテーション科の西田佳弘病院教授、リハビリテーション部の田中伸弥理学療法士(筆頭著者)、同大大学院医学系研究科神経内科学の勝野雅央教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Medical Directors Association」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

転倒は地域在住高齢者の約30%が毎年経験しており、転倒に関連した傷害は障害発生の原因となっている。入院患者における転倒の発生率は高く、疾病から生じる廃用症候群や、不慣れな環境自体が転倒リスクの増加と関連している。転倒予防に関する最新のガイドラインでは、全ての入院高齢者あるいは医療専門家によって転倒のリスクがあると特定された若年成人に、個別化された単独または多職種による転倒予防戦略を提供することが推奨されている。

転倒リスクは、投薬状況、、心血管機能障害とともに、身体機能障害によって予測可能とされている。転倒予防のガイドラインでは転倒リスクを判断するために立位バランス、歩行速度、筋力の評価を推奨している。高齢者の身体機能を評価する手段として、立位バランス、歩行速度、下肢筋力のテストで構成された「Short Physical Performance Battery(SPPB)」が挙げられる。SPPBは、地域在住高齢者を対象とした研究では転倒、、死亡のリスクを含むさまざまな転帰を予測可能だと報告されているが、入院中の患者においても同様に予測できるかは不明だった。

そこで研究グループは今回、転倒リスクの高い患者においてSPPBを用いて下肢機能を評価し、足の健康度が低い患者の院内転倒リスクはどのくらいなのかを明らかにすることを目的に、観察研究を行った。

対象となった入院患者1,200例中、身体機能の重度低下者は22%

対象となったのは、名古屋大学医学部附属病院において転倒発生数が多い病棟(主に老年内科と神経内科に入院した患者)の入院患者1,200例(年齢中央値74歳、男性が51%)。身体機能の指標としてリハビリテーション開始時にSPPBを用いて評価し、その点数を用いて患者を5群に分類して解析した。点数による分類の内訳は、0点(評価不可)、1~3点(重度低下)、4~6(中等度低下)、7~9点(軽度低下)、10~12点(正常)とした。

また、対象患者の入院経過を調査し、入院中に転倒が発生したか否かを記録して解析した。その結果、対象者のSPPBの内訳は、0点28%、1~3点22%、4~6点24%、7~9点14%、10~12点22%だった。

身体機能低下で転倒リスク「高」、従来法+SPPBでの評価追加が入院後経過の予測に重要

入院期間中(中央値15日)、転倒は101例(8.4%)で発生し、SPPB分類の各群における院内転倒発生率は、0点12.0%、1~3点14.9%、4~6点7.9%、7~9点2.4%、10~12点1.5%だった。SPPB 10~12点の患者を基準とすると、院内転倒リスクは0点6.2倍、1~3点8.8倍、4~6点4.7倍、7~9点1.4倍であることが判明した。

さらに、SPPB点数低値は、退院時の日常生活動作障害、長期入院、自宅退院困難、入院中死亡と関連していることが明らかとなった。また、年齢、性別、併存疾患、服薬状況、転倒転落アセスメントシートなどの従来知られている予測因子のみから院内転倒のリスクを予測する場合と比較して、これらの因子に「SPPB」という情報を追加して予測すると、院内転倒発生の予測に有用であることがわかった。

以上の結果から、転倒リスクが高い患者において、身体機能低下を認めた患者は転倒リスクが高いこと、従来の方法に加えてSPPBを用いた身体機能評価を実施することは、患者の入院後経過の予測に重要であることが明らかとなった。

SPPBによる評価の追加、リスク層別化や各患者に適した介入法選択に有効

今回の研究により、転倒リスクの高い患者において、身体機能低下が転倒リスクを高めることが判明した。同研究により、従来の医学的な評価に加えて客観的に下肢機能を評価することが、患者の入院後経過の予測に重要であることが明らかになった。これは、リスクの層別化や、各患者に適した介入法の選択に役立つと考えられる。

「今後、これらの患者に対して、どのような介入を行うべきか、介入を行うことで転倒発生率が低下するかを明らかにする研究へと発展することが期待される」と、研究グループは述べている。

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