常在真菌マラセチア・グロボーサ、腸から膵臓へ移行し発がんを促進すると報告されている
東京医科歯科大学は9月5日、膵臓がんの腫瘍内に含まれる真菌マラセチア・グロボーサの量が、膵臓がん患者の生命予後や術後再発と関係していることを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科消化管外科学分野の絹笠祐介教授、徳永正則准教授、奥野圭祐助教、米国シティオブホープナショナルメディカルセンターベックマン研究所のAjay Goel教授、米国トランスレーショナル・ゲノミクス研究所のDaniel Von Hoff教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Gastroenterology」にオンライン掲載されている。
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おおよそ220~390万種の真菌(カビ)が人間の皮膚や体内に常在しており、人間の栄養や代謝、免疫、さまざまな身体器官の生理機能などに大きな影響を及ぼしていることが明らかになってきている。近年、がん患者で真菌が多く検出されることなどから、真菌と発がんやがんの進行との関係が注目されている。最新の研究では、皮膚や腸内の常在真菌であるマラセチア・グロボーサが腸管内から膵臓に移行し、さまざまな経路を介して膵臓がんの発がんを促進する可能性が示唆されている。また、がん患者の真菌量は、がん患者の診断や予後を予測する分子バイオマーカーになる可能性も示唆されており、膵臓がんを含むさまざまながんで盛んに研究が行われている。
180人の膵臓がん手術組織検体の43%からマラセチア・グロボーサのリボソームDNA検出
研究グループは、180人の膵臓がん患者の手術組織検体からDNAを抽出し、真菌マラセチア・グロボーサのリボソームDNAが検出されるかPCR法を用いて検討した。このPCR法を用いた検討では、180人中78人(43.3%)の手術検体からマラセチア・グロボーサのリボソームDNAが検出され、残りの102人からは検出されなかった。
マラセチア・グロボーサ陽性群、術後3年生存率・再発率ともに悪化
また、マラセチア・グロボーサDNAが検出された膵臓がん患者78人(マラセチア・グロボーサ陽性群)と検出されなかった102人(マラセチア・グロボーサ陰性群)の術後3年生存率と再発率を比較したところ、マラセチア・グロボーサ陽性群では有意に生存率が悪く、再発率が高いことがわかった。
マラセチア・グロボーサによる発がんメカニズムの解明や、新規治療薬の開発が期待される
今回の研究では、膵臓がん患者の手術組織検体から抽出したDNAを用いて、腫瘍内のマラセチア・グロボーサ量をPCR法で測定し、腫瘍内のマラセチア・グロボーサ量が膵臓がん患者の生命予後や術後再発リスクと関係していることを明らかにした。「本研究成果により、マラセチア・グロボーサによる膵臓がん発がんメカニズムのさらなる解明や、マラセチア・グロボーサをターゲットにした、膵臓がんに対する新しい治療薬の開発が期待される」と、研究グループは述べている。
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