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前立腺がん術後の合併症、自己脂肪幹細胞による再生医療の臨床試験開始-国がんほか

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2023年09月06日 AM09:30

前立腺全摘後「」残存、長期的な効果が望める再生医療が期待される

国立がん研究センターは8月31日、前立腺がんの根治的前立腺全摘(以下、前立腺全摘)後に合併症として発症する腹圧性尿失禁(以下、尿失禁)を対象に、再生医療を用いた臨床試験を同センター東病院で開始したと発表した。同研究にかかる費用は、メディカル・データ・ビジョン株式会社より拠出される。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

前立腺がんは、男性で最も多いがんであり、全国がん登録2019年によれば年間約9.5万人が罹患し、また、年間約2万人の患者が前立腺全摘除術を受けている。尿失禁は前立腺全摘除術後の代表的な合併症で、患者の約9割は骨盤底筋群体操と薬剤を主とした保存的治療を行い術後1年程度で治る。しかし、約1割の患者では尿失禁が残存する。尿失禁は、患者のQOLを低下させ、仕事、家事、社会的活動を狭め、心理的に大きな負担となることが多数の研究で報告されている。近年は、ロボット支援手術の普及により体への負担が少ない手術が行われるようになり、重症(1日400cc以上の失禁)患者は減少しているが、軽~中等症の患者の割合は増えている。尿失禁が改善しない場合の治療には、コラーゲンや自己皮下脂肪組織を括約筋近傍に内視鏡で注入し、尿道を狭くする治療が施行されたことがあるが、注入されたコラーゲンや脂肪組織は自然吸収されるため効果は極めて短期的だった。そこで、長期的な効果が望める再生医療が期待されている。

変形性関節症などで再生医療研究中の脂肪幹細胞を利用

今回利用する脂肪幹細胞は、2001年にその存在が確認され、同細胞を含む脂肪組織が容易かつ安全に採取できること、同細胞がさまざまな細胞に分化する能力を保持している。このことから、整形外科での変形性関節症、乳がん術後の乳房再建、消化器内科での肝硬変治療などで同細胞を用いた再生医療が活発に研究されている。

患者の体型に関係なく同量・大量の脂肪幹細胞作製が可能

今回の研究は、再生医療等の安全性の確保法等に関する法律において求められる第二種再生医療計画のもと施行されている。脂肪幹細胞を患者の皮下脂肪組織から取り出し、細胞加工施設で一定数の脂肪幹細胞まで増やして(培養)、再び患者の体(括約筋部)に戻す。培養するため、患者から取り出す脂肪組織は少量で済み、体型に関係なく同量かつ大量の脂肪幹細胞を作ることができる(規格化)が利点として挙げられる。

2025年5月まで実施予定

今回の研究の目標症例数は10例、予定期間は2025年5月まで行う予定だ。流れとしては、国立がん研究センター東病院で、局所麻酔下で左臀部から約10~15ccの脂肪吸引を行う。採取した脂肪を細胞培養加工施設(医療法人再生会そばじまクリニック)に運び、同施設で脂肪組織幹細胞の分離・培養・品質チェックを実施。一定数まで増えた脂肪幹細胞を超低温で、東病院に輸送する。そして、東病院で、右臀部より10~15ccの脂肪を採取し、脂肪幹細胞と混和して外尿道括約筋近傍に内視鏡下で注入する(尿道壁の膨らみ方を観察しながら、数か所に分けて注入)。混ぜあわせる脂肪は、幹細胞生着の足場として考えられている。

また、注入後1年間、排尿日誌、問診票(国際尿失禁問診票CIQ-SF)、24時間パッドテスト(日常生活の中での24時間の失禁量を求める、3日間の平均値を使用)で定期的に評価していく。排尿日誌では、尿量を測定できるコップで、日常生活の中で最低24時間(できれば数日~1週間)にわたって、毎回の排尿時間と排尿量、尿失禁の回数、パッド類の枚数、およびその他の出来事を患者側で記載。これにより昼間・夜間の排尿回数や一回の排尿量、尿失禁の頻度と重症度が比較的容易に把握できるとしている。

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