世界8地域34か国150万人のデータを統合解析
九州大学は9月4日、過体重、高血圧、高コレステロール血症、喫煙習慣、糖尿病の5つの心血管疾患の危険因子が、世界中の心血管疾患(虚血性疾患または脳卒中)罹患の半分以上に寄与していることがわかったと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の二宮利治教授、坂田智子助教らの研究グループ(久山町研究)が参加している国際共同研究Global Cardiovascular Risk Consortiumによるもの。研究成果は、「New England Journal of Medicine」に掲載されている。
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心血管疾患は、全世界の死因の約3分の1を占めており、心臓血管疾患は多くの場合、数十年にわたって静かに進行する。多くの場合、気づかれないうちに血管壁が変化し、動脈硬化を引き起こし、心血管疾患を発症する。
Global Cardiovascular Risk Consortiumは、ハンブルグ・エッペンドルフ医療センター(UKE)心臓血管センター循環器科とドイツ心臓血管研究センター(DZHK)が主導する国際共同研究であり、北米、中南米、西ヨーロッパ、東ヨーロッパおよびロシア、北アフリカおよび中東、サハラ以南のアフリカ、アジア、オーストラリアの8地域の34か国における112のコホート研究に参加した150万人の個人レベルのデータを用いた統合解析を行うことにより、世界全体および地域別の心血管疾患の危険因子およびその影響を明らかにすることを目的としている。
過体重・高血圧・高コレステロール血症・喫煙習慣・糖尿病、総死亡の約2割にも寄与
今回研究により、過体重、高血圧、高コレステロール血症、喫煙習慣、糖尿病という5つの危険因子をすべて合わせると、女性では心血管疾患罹患の57.2%、総死亡の22.2%、男性ではそれぞれ52.6%、19.1%に寄与していることが明らかになった。アジア地域のみでは、女性59.2%、34.3%、男性55.6%、43.2%という結果だった。
さらに、血圧値、血清コレステロール値の上昇に伴い心血管疾患の罹患リスクが直線的に上昇すること、上述の危険因子の心血管病罹患への影響は年齢が若いほど高い(例:40歳代の方が80歳代よりも高血圧の心血管疾患罹患への影響が高い)ことも明らかになった。
説明がつかない部分に関して新たな危険因子の検討が必要
今回の結果から、これらの5つの危険因子を適切に治療・管理することにより心血管疾患の半分以上が予防できることが示唆された。「一方、これらの5つの危険因子では心血管疾患罹患の約45%、総死亡の約80%は説明できないことから、今後も新たな危険因子の検討が必要だ」と、研究グループは述べている。
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