2021年8月に調査、産前473人、産後1,246人の父親が対象
国立成育医療研究センターは9月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下における父親の産前・産後期うつ病のリスク要因に関する研究結果を発表した。この研究は、同センター研究所社会医学研究部の帯包エリカ研究員、大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部の田淵貴大部長補佐らの研究グループによるもの。研究結果は、「Journal of Psychosomatic Obstetrics & Gynecology IPOB」に掲載されている。
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父親の産前・産後のうつ病発症率は約10%前後といわれ、母親と同様な頻度で起こり、自身やこどもの健康に影響を与える重要な問題である。しかし、父親に関する要因については明確になっていないことが多くある。
研究グループは、父親の心理・社会的な要因を中心に、父親がどのような属性や要因によってメンタルヘルスケアを必要とし、どのような介入を実施すべきかを理解するため、研究を実施した。具体的には2021年8月に「コロナ禍の社会・健康関連の要因への影響を明らかにするためのインターネットコホート調査(JACSIS調査)」を実施。対象は、パートナーの妊娠・出産を経験した産前473人と産後1,246人の父親であった。
「コロナへの強い不安」「家族機能の低さ」などがリスクの高い要因
その結果、父親の産前うつ症状のリスク要因は(各リスク要因を持たない父親と比較)、「コロナへの強い不安」(約2.1倍)、「家族機能の低さ」(約2.0倍)、「ソーシャルサポートの低さ」(約2.0倍)、「子ども時代の困難な体験」(約1.6倍)、「妊娠前の父親のうつ病既往」(約1.6倍)という結果だった。
また、産後うつ症状については、「コロナへの強い不安」(約2.1倍)、「家族機能の低さ」(約1.9倍)、「妊娠前の父親のうつ病既往」(約1.7倍)、「早産児(37週未満)」(約1.3倍)、「パートナーからの暴力被害」(約1.2倍)であった。
父親に対しても母親同様に支援が必要
研究の結果、産前・産後共に「コロナへの強い不安」(約2.1倍)や、困った時に家族が助けになってくれるかなどの「家族機能の低さ」(約1.9倍)に対するリスクが高いことが明らかになった。これらの要因は、過去の研究で示された母親のうつ病のリスク要因とも共通していたことがわかった。
「父親の産前・産後期のメンタルヘルスケアが重要であり、母親に対する支援と同様に、保健・医療従事者による父親やその家族への適切な支援が求められる。今後の研究で早期発見や予防への取り組みが期待される」と、研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース