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中等症以上の脊柱側弯症、「ZOZOSUIT」による検知に成功-東大病院ほか

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2023年09月01日 AM10:24

脊柱側弯症を適切に検知可能なスクリーニング法の開発

東京大学医学部附属病院は8月31日、株式会社ZOZOが開発した3D計測用ボディスーツ「(R)」と検証用に開発した専用のスマートフォンアプリを用いて、主に若年世代の治療を要する可能性のある中等症以上の脊柱側弯症を検知することに成功したことを発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科整形外科学の伊藤悠祐氏(医学博士課程)、田中栄教授、大島寧准教授、次世代運動器イメージング学講座の土肥透特任准教授(研究当時)、大友望特任助教(研究当時)、同大医学部附属病院手術部の谷口優樹講師のグループと株式会社ZOZOの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Spine」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

脊椎の正面や背後から見た際の左右へのゆがみや曲がりを脊柱側弯症といい、特に思春期に発症する原因不明のものを思春期特発性側弯症と呼ぶ。自覚症状に乏しいことから自分自身や家族が気づかないことも多い。学校検診にも組み込まれているが、既存の方法(視診やモアレ法)では感度の問題や、検査に必ず検査者を必要とすることから頻回の検査が困難であり、適切な時期に検知できない、などの問題点が指摘されていた。一方、特発性側弯症は成長期に急速に悪化することが知られており、進行すると手術が必要になることもあるため、コブ角が25°程度を超えた時点で成長段階によっては、進行を防ぐために装具治療に代表される保存療法を開始する必要がある。こうした背景から特に治療を要するような脊柱側弯症を再現性よく、適切なタイミングで検知できるような新たなスクリーニング方法の開発が必要とされていた。

被験者はZOZOSUITを装着し、アプリの指示に沿って撮影

研究グループは、3D計測用ボディスーツZOZOSUITと、検証用に開発した専用のスマートフォンアプリを用いて、主に若年世代の治療を必要とする可能性のある中等症(コブ角25°以上)以上の脊柱側弯症を検知できるか検討を行った。

被験者はZOZOSUITを装着した状態で1.5m離した位置に設置したスマートフォンのアプリの指示に従い、30°ずつ向きを変えていき、12枚の写真を撮影する。すると、撮像した12枚の写真からアプリ内で自動的に体表の3Dモデルが生成される。今回の研究ではこの3Dモデルから取得・再構成した各レベルの横断像から体幹のゆがみを示すZ値という固有値を定義し、検討を行った。

コブ角25°以上の中等症以上の側弯症を感度95.3%で検出

側弯症症例54例と非側弯症47例で検討を行ったところ、中等症(コブ角25°以上)以上の側弯症症例では非側弯症群やコブ角25°未満の軽症群と比較して、有意にZ値が高値であることが判明した。具体的には、非側弯症群(コブ角≤9°)で平均Z値は20.7㎜、軽症群(10°≤コブ角≤24°)で平均Z値は21.4㎜、中等症群(25°≤コブ角≤44°)で平均Z値は32.3㎜、重症群(コブ角≥45°)で平均Z値は35.2㎜であった。

またROC解析を行ったところ、最適なカットオフ値としてZ値=19.9㎜と算出され、このカットオフ値に設定すると中等症以上の側弯症を感度95.3%、特異度58.6%で検出できることが確認された。

新規診断ツールとしての実用化に期待

これらの結果から、スクリーニング検査としては妥当な感度と考えられ、今回開発した技術が脊柱側弯症検知のスクリーニングツールの基礎技術として有用である可能性が示唆された。研究成果を応用することで、将来的には検査者なしに非侵襲的に自宅で繰り返し脊柱側弯症のセルフスクリーニングを行うことができる新規診断ツールの開発につながることが期待される。

「実用化に向けてはまだ課題も多いが、この技術を応用した新規の脊柱側弯症のスクリーニングツールの開発が可能となれば、重症化されるまで見逃されていた脊柱側弯症の症例を適切なタイミングで検知・医療機関に誘導できるようになるなど、患者への恩恵が期待される。また手術治療を回避することができる症例が増えることは患者へのメリットのみならず、医療経済的な観点からも大きなメリットと考えられる」と、研究グループは述べている。

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