国内有病率は徐々に増加、多くの患者で健康関連QOL低下
ファイザー株式会社8月29日、日本の皮膚科医および円形脱毛症患者を対象としたアンケート調査の結果と日本の疫学情報を用い、円形脱毛症がおよぼす日本の疾病負荷を推計した結果、その負荷は年間1127億円にも及ぶことがわかったと発表した。この研究は同社と杏林大学医学部皮膚科学教室の大山学教授らの研究グループによるもの。研究成果は「The Journal of Dermatology」に掲載されている。
円形脱毛症は斑状の脱毛を特徴とする自己免疫疾患で、免疫細胞が正常な毛包を攻撃することで脱毛症状が起こる。多くの場合、頭皮で脱毛するが、時には顔(眉毛、まつ毛、ひげ)を含む頭部全体や全身に症状が出ることがある。平均発症年齢は25~35歳であるが、子どもから高齢者まで幅広い年齢層で、性別、人種を問わず発症する。日本での有病率は徐々に増加しており、約0.2~0.3%と推計されている。また、円形脱毛症の治療法は限られており、発症後の管理が難しいことも知られている。これらのことから、多くの患者において健康関連QOLが低下し、うつ病や不安神経症などの深刻な心理的影響が生じる可能性がある。
1127億円のうち約8割は生産性損失に起因する社会的損失額
研究グループは、日本の皮膚科医および円形脱毛症患者を対象としたアンケート調査(Adelphi Alopecia Areata Disease Specific Program)の結果と日本の疫学情報を用い、円形脱毛症がおよぼす日本の疾病負荷を推計した。
その結果、円形脱毛症の疾病負荷は年間1127億円であり、そのうちの78.2%(881億円)は生産性損失に起因する社会的な損失額であることがわかった。生産性損失の大きさを、脱毛巣の範囲別(頭部全体の25%未満、25~49%、50~100%)に推計したところ、脱毛範囲25%以上の患者は25%未満の患者と比べ、生産性損失がより大きいことが示された。
重症患者の脱毛巣を25%未満に導くことが重要
円形脱毛症診療ガイドラインでは、脱毛巣が頭部全体の25%以上の患者を重症例と定義している。今回の研究では調査方法やサンプル数の限界などはあるものの、円形脱毛症による生産性損失を含む疾病負荷を減少させるためにも、重症患者の脱毛巣を25%未満に導くことが重要であると考えられた。
杏林大学の大山学教授は、「これまでも円形脱毛症、特に重症患者の疾病の実生活への影響は大きなものであると捉えられてきてはいた。今回、それが数値として示されたことで、医療者関係者や患者とその関係者以外の一般の方々にも、より現実感をもって実感されるようになったと言える。その意味でこの論文は意義深いものである」、と述べている。
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