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サルコイドーシスと悪性リンパ腫を高精度に鑑別できるAIモデルを開発-東京医歯大

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2023年08月30日 AM10:38

高感度に病変検出の18F-FDG PET/CTでも鑑別困難な2疾患

東京医科歯科大学は8月29日、サルコイドーシスと悪性リンパ腫について、18F-FDG PET/CTのMIP画像を用いた深層機械学習モデルを開発したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科統合呼吸器病学分野の宮崎泰成教授、青木光大学院生、同放射線診断学分野、同血液内科分野、同M&Dデータ科学センター生物統計学分野の研究グループによるもの。
研究成果は、「European Radiology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

サルコイドーシスは、全身臓器(肺・心臓・肝臓など)やリンパ節に非乾酪性肉芽種を形成する良性疾患であり、経過観察や免疫抑制療法が行われる。悪性リンパ腫は、同様に、全身臓器やリンパ節に病変形成する造血器腫瘍の一種。治療として、化学療法や放射線療法が行われる。治療方法が異なるため両疾患を鑑別することは非常に重要だ。しかし、高感度に病変を検出できる18F-FDG PET/CTであっても鑑別が困難とされている。

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、深層学習Deep Learningの一種。多層の畳み込み層とプーリング層を組み合わせて、入力画像から特徴マップを抽出するAIの手法だ。CNNは医用画像研究で用いられており、従来手法よりも高い精度を示す報告が多数されている。

サルコイドーシスと悪性リンパ腫の病変分布に違い

今回、研究グループは、治療前に18F-FDG PET/CTが撮影されたサルコイドーシス症例56人、悪性リンパ腫症例62例を後方視的に収集し、FDG異常集積部位を比較検討した。サルコイドーシスでは縦隔リンパ節および肺により顕著なFDG集積が見られた。しかし、悪性リンパ腫では頸部リンパ節により顕著な集積が見られた。縦隔リンパ節では、サルコイドーシス患者は#2、#4、#7、および#10リンパ節に有意なFDG集積を認めた(すべてp<0.01)。悪性リンパ腫では、#1のリンパ節に集積する傾向があった(p=0.08)。

正面・側面MIP画像を用いたCNNモデル、平均精度0.890、感度0.898など達成

続いて、FDG集積部位がわかりやすいMIP画像を用いてCNNモデルを作成。モデルは正面像と側面像をData Augmentationした後に入力し、モデル性能は5-fold cross validationで評価した。正面および側面のMIP画像を用いたCNNモデルは、平均精度0.890(95%信頼区間(CI):0.804-0.977)、感度0.898(95%CI:0.782-1.000)、特異度0.907(95%CI:0.799-1.000)、AUC 0.963(95%CI:0.899-1.000)を達成した。さらに、Grad-CAMを用いてモデルの注目している部分を可視化することができた。

従来よりも迅速かつ高性能なモデルを提唱

入力された画像から病変部を特定し、その特徴を把握することで画像診断は行われる。このプロセスは人間でも機械学習でも変わりがない。従来の機械学習の手法では病変部の特定や、必要な特徴量の選択は人の手で行われており、時間を要した。しかし、近年注目されている深層機械学習ではその手間は必要なく自動化される利点がある。

今回の研究では、サルコイドーシスと悪性リンパ腫という鑑別が重要な疾患に対して、18F-FDG PET/CTが撮影された症例で、そのFDG集積部位に差異があることを明らかにした。また、深層機械学習の手法を用いることで従来よりも迅速かつ高性能なモデルを提唱した。同研究をもとに将来的には、全身に病変を形成するさまざまな疾患に対して応用することにより、画像診断を発展させる可能性がある、と研究グループは述べている。

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