FBP1遺伝子変異によるFBPase欠損症の発症メカニズムは不明だった
千葉大学は8月23日、「フルクトース-1,6-ビスフォスファターゼ(FBPase)欠損症」の患者において、FBP1遺伝子の変異を同定したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院の佐久間一基特任准教授、同・災害治療学研究所の田中知明教授、三木隆司教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Communications Biology」に掲載されている。
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FBPase欠損症は、糖新生の障害を伴う先天代謝異常症で、体内で糖を合成するために重要な酵素「肝型FBPase」の欠損により生じる。普段は無症状だが、長時間の絶食でグリコーゲンが枯渇すると低血糖をきたし、糖新生の基質である乳酸が蓄積して、重篤な低血糖と乳酸アシドーシスを引き起こす。1970年に低血糖および乳酸アシドーシスをきたす疾患として初めて報告され、1997年、同疾患においてFBPaseをコードするFBP1遺伝子の変異が生じていることが報告された。以降、複数のFBP1遺伝子変異が報告されているが、非常にまれな疾患のため、FBP1遺伝子変異による発症メカニズムの解析は十分に行われていない。
同定したFBP1遺伝子のミスセンス変異を生化学的特性に基づき、Type1とType2に分類
研究グループは今回、FBPase欠損症患者においてFBP1遺伝子のミスセンス変異を同定した。そして、同定した変異(G164D, F194S)に加え、過去にFBPase欠損症で報告されているFBP1ミスセンス変異の機能解析を行い、FBP1変異の生化学的特性に基づき、Type1とType2に分類した。
Type2変異はタンパクフォールディング異常を介しFBP1タンパク質発現低下を引き起こす
Type1変異(D119N, P120L, N213K, E281K)は、FBPase活性部位に位置し、FBPase活性低下をきたすが、FBP1タンパク質の発現は保たれる。一方、Type2変異(R158W, G164D, G164S, A177D, F194S, G260R, P284R, G294E, G294V)は、FBPase活性部位に位置しないが、アミノ酸の疎水性に変化を認め、タンパクフォールディング異常を引き起こし、FBP1タンパク質の発現低下とFBPase活性欠損を生じることがわかった。
シャペロン療法がType2変異に対する治療選択となる可能性
今回の研究により、同定された遺伝子変異はタンパクフォールディング異常を引き起こし、その結果、FBP1タンパク質の発現低下とFBPase活性欠損が生じることが明らかにされた。さらに既知の変異の解析を行い、FBP1タンパク質の発現低下をきたす変異ときたさない変異があることが発見された。
「本成果は、ファブリー病に対して承認され新たな治療手段として期待されているシャペロン療法がType2変異に対する新たな治療選択となる可能性を示しており、今後、FBP1遺伝子の変異箇所に応じたFBPase欠損症の有効な治療法の開発につながることが期待できる」と研究グループは述べている。
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