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体軸性脊椎関節炎に対するIL-17A標的治療ワクチン、P2試験を開始-阪大ほか

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2023年08月28日 AM10:23

靭帯と骨との付着部位に炎症がみられる強直性脊椎炎

大阪大学は8月22日、強直性脊椎炎に代表される体軸性脊椎関節炎患者を対象に、インターロイキン(IL)-17Aを標的とした治療ワクチン(FPP003)の医師主導治験(第2相試験)を開始することを発表した。FPP003は、同大大学院医学系研究科の中神啓徳寄附講座教授(健康発達医学)、日本生命済生会日本生命病院の辻成佳部長(リハビリテーション科)、森ノ宮医療大学大学院の冨田哲也教授(保健医療学)らの研究グループが開発したもの。今回の治験では株式会社ファンペップ(大阪大学発ベンチャー)より提供される。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

強直性脊椎炎は、仙腸関節炎や脊椎炎による腰背部痛や臀部痛が初発症状となることが多いことが知られており、疼痛が運動により軽快し、安静や就寝により増悪する炎症性腰背部痛が特徴とされる。アキレス腱の付着部である踵部を始め、身体各所の靱帯付着部(関節周辺の骨性突出部など)の炎症兆候(疼痛、腫脹)がしばしば見られ、時に股、膝、肩など四肢の大関節の疼痛や運動制限も生じる。

IL-17Aは、関節炎に特徴的な付着部炎において重要な役割を果たしていると考えられている。抗IL-17A抗体医薬品は、既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬に対し治療効果が認められており、日本でも強直性脊椎炎、X線所見を伴わない体軸性脊椎関節炎に対しても複数の製剤が承認されている。

IL-17Aに対し抗体を誘導するペプチド治療ワクチン

FPP003は、IL-17Aに対する抗体を誘導するペプチド治療ワクチン(抗体誘導ペプチド)。キャリアペプチドAJP001は自然免疫活性化作用とキャリアとしての機能を併せ持つ20アミノ酸からなる機能性ペプチドである。AJP001とB細胞エピトープを結合させた抗体誘導ペプチドは、樹状細胞に取り込まれて自然免疫活性化作用により樹状細胞を活性化し共刺激分子を発現させる。また、AJP001自身がヘルパーT細胞エピトープとしてヘルパーT細胞に提示され、ヘルパーT細胞を活性化する。AJP001とB細胞エピトープを結合させた抗体誘導ペプチドを取り込んだB細胞はAJP001を提示し、これを認識した活性化T細胞がB細胞を活性化し抗体産生を誘導する。

健康成人対象P1試験で安全性と有効性を確認

研究グループは、2022年4月から第1相試験を実施した。健康成人20人が参加し、FPP003が16例 [低用量群(8例)、高用量群(8例)] 、プラセボが4例に、二重盲検下で投与した。FPP003の副作用は、主に注射部位疼痛など、注射部位に関連したものが確認されたが、通常のワクチンの皮下接種時にも見られるものであった。FPP003の投与により低用量群と高用量群ともにIL-17Aに対する抗体価の上昇が確認され、最終投与後12週時まで持続する傾向を示した。このことから、FPP003投与による安全性が確認され、また十分な免疫原性を有することが考えられた。

P2試験、体軸性脊椎関節炎患者において評価

第2相試験は、医師主導治験で、寛解状態にある体軸性脊椎関節炎患者に対するFPP003の安全性および免疫原性を評価する。単施設、非盲検非対照で、6症例の登録を予定。有効性評価項目を探索的に検討する。

「研究成果により、ペプチドワクチンFPP003が希少難病である強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の治療選択肢となることを期待している」と、研究グループは述べている。

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