■加算ゼロでラグ懸念も
中央社会保険医療協議会の薬価算定組織は23日の薬価専門部会で、2024年4月に行われる薬価制度改革に向け、薬価算定基準に関する意見陳述を行った。原材料費、製造経費等を積み上げる原価計算方式で開示度50%未満の品目は新薬の薬価算定において加算係数をゼロとする措置が取られているのに対し、開示度向上を促すため、開示度が相当程度高い品目については、インセンティブとして何らかの評価を検討するよう提案した。委員からは「加算ゼロでドラッグラグ・ロスにつながるのであれば問題」「開示度が上がるのであればインセンティブの付与を検討することは否定しない」との意見が上がった。
原価計算方式では、製品総原価のうち開示度に応じて補正加算の加算率に差を設定しており、2022年度改定で開示度50%以下は加算ゼロとする厳しい措置が取られた。18年度改定以降に原価計算方式で収載された77成分のうち、開示度50%未満は48成分と全体の66.4%に上り、22年度改定以降に収載された成分で見ると、18成分のうち16成分が開示度50%未満となっており、開示度向上は進んでいない。
こうした状況を踏まえ、薬価算定組織は開示度向上を促すため、開示度が相当程度高い品目についてはインセンティブの創設を検討するよう求めた。
石牟禮武志専門委員(塩野義製薬渉外部長)は、「サプライチェーンが複雑化し、それが複数国にまたがると算定にかかる資料の提出が困難。開示度が低い品目が多い現状は、開示することがなかなかできないという状況を示している」と述べ、企業側の努力だけでは難しい状況に理解を求めた。
森昌平委員(日本薬剤師会副会長)も、「製薬企業で開示度向上の取り組みが重要となるが、22年度改定以降には開示度50%以上となっていたのは2品目しかなかった。様々な要因があって加算ゼロとなり、ドラッグラグ・ロスにつながるようであれば対応策を考えるのが次の課題になる」との問題意識を示した。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「公的な薬価を決める上で原価を開示することは当然と考えており、敢えて評価する必要性に疑問はあるが、これによって開示が進むのであれば検討すること自体は否定しない」と議論に応じる考えを示した。
こうした意見に対し、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「開示度が相当程度高い品目にインセンティブを与えるのは、原価に基づき薬価を算定するという原価算定方式の本来の目的から逸脱してしまっており、本末転倒」と反対する姿勢を示した。
一方、原価計算方式での算定で用いる営業利益の取り扱いについては、製薬企業から提出されたデータを集計したところ、移転価格として日本に導入される品目割合が80%以上の企業における営業利益率は、平均6.6%、90%以上の企業で5.9%となり、国内医薬品産業の平均的な営業利益率(16.6%)の2分の1以下となっていた。そのため、薬価算定組織は原価計算方式での算定において、営業利益率を平均的な営業利益率より限定的な範囲で適用するよう求めた。